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 生物は、単細胞生物から多細胞生物へと進化し、多細胞生物のなかでさらに高等生物へと進化してきました。そしてこのように進化してきた生物の歴史は、高等生物になっても発生の段階で引き継がれているようです。

 

 19世紀にドイツの生物学者であるエルンスト・ヘッケルは、「ある動物の受精から誕生までの発生過程は、その動物が進化してきた道のりをもう一度繰り返すかたちで行われる」という仮説を提唱しました(この仮説を「ヘッケルの反復説」といいます)。この仮説によれば、受精卵は単細胞段階を表すものと考えられ、卵割(らんかつ)によって細胞が増え、胞胚(ほうはい)から原腸陥入(げんちょうかんにゅう)によって消化管がつくられる過程を多細胞動物の進化の過程であるとみなし、これによって多細胞動物の進化の道筋を明らかにしようとしました。また、発生段階の胚は、魚の段階を経て、その後、両生類・爬虫類といった各進化の段階をたどって哺乳類へと進化していったと考えられました。

エルンスト・ヘッケル

220px-Ernst_Haeckel_2(写真:Wikipedia)

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 ところがこのヘッケルの反復説は、数々の点で批判の対象になりました。それでもヘッケルの反復説は、今日の中学校や高校の教科書にも掲載されていることから、この仮説は非常に重要であるといえます。実際、この仮説を実験によって裏づけた研究者がいます。西原克成(にしはらかつなり)博士は、実験進化学という科学的手法を用いてサメを陸生動物に変化させることに成功することで、このヘッケルの反復説を証明しました。このようにヘッケルの反復説は進化を考えるうえで意義ある仮説であるといえます。

512px-haeckel_drawings(脊髄動物各群の発生過程)

 また、いまでも先天奇形の1つである鰓弓症候群(さいきゅうしょうこうぐん)という病気があります。鰓弓の「鰓」は「エラ」と読みます。魚の病気ではなく、れっきとした人間の病気です。ヘッケルの発生反復説にそった病気で、実際に発生の段階でいったん人間にできた「鰓」が残ってしまうという病気です。また「福乳・ミルクライン」といって、胸の乳首が6個ある女性もときどき生まれます。

 このことを踏まえて考えると、長い時間をかけて進化してきた生命の誕生は、1つの受精卵から誕生までの発生過程という、非常に短い時間に再現されているといえるでしょう。

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