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 がん細胞とは、たんに①無秩序無制限な増殖(不死化)をするだけでなく、②自分とは違ったものに分裂する能力、すなわち非対称細胞分裂を獲得してしまいます。がん化していない通常のわれわれの細胞(体細胞)は決められた回数のみ細胞分裂を行い、それ以上の細胞分裂は行いません。そしてある一定の細胞分裂のあと、アポトーシス(細胞自殺)もしくは細胞老化という状態になり、その機能を停止します。また、細胞分裂も、もとの細胞(母細胞)とできた細胞(娘細胞)はまったく同じで、違う細胞に分裂することは絶対にありません。これを恒常性と呼びます。皮膚から突然歯が生えてくることもなく、脳の中に突然毛髪ができないのは、この恒常性のためです。しかし、冒頭でも書いたように、がん細胞は、①不死化と、②非対称性分裂能を獲得しています。

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 そこで、少しがんの話を離れ、今までお話してきた受精卵や万能細胞といったものを思い起こしてください。通常の体細胞と対比するキーワードの1つに非対称分裂がありました。細胞分裂で、まったく違うものに分裂してしまう能力のことです。受精卵(万能細胞)にもしこの能力がなかったら、受精卵は何万回分裂しようと無数の受精卵が複製されるだけで1個の哺乳類や生命にならないことはすでに解説しました。この能力は、がん細胞と万能細胞だけに備わった非常に特殊な能力なのです。さらに驚くべきことに、がん細胞に備わっている不死化(無制限の増殖)という特殊能力も、万能細胞には備わっているのです。たとえば、一卵性双生児とは、ある程度細胞分裂を終えた状態の細胞集団(分裂細胞の集まり)になんらかの原因が加わり、2つに分割されてしまったときに起こると書きました。最初の受精卵(版の細胞)が1回1回分裂するたびに老化してしまったら、ある程度細胞分裂が終えた段階で分割された細胞を起源とする一卵性双生児は正常な状態で存在できなくなります。でも、双子はあたかもたった1つの新品の受精卵をもとにしたように生まれてきます。このことは、万能細胞が不死化した状態で分裂できる間接的な証明にもなっているのです。そして、iPS作製時に使った山中ファクターにがん遺伝子のc-Mycが含まれていたのは、こういう意味から考えても至極必然なのです。

C-Myc発がん遺伝子

 

 

 

c-Mycと呼ばれる発がん遺伝子

(写真:Wikipedia)

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