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 『生命倫理と最新科学生命』では万能細胞(ES細胞やiPS細胞)を用いた再生医療の倫理的側面をお話しましたが、ここでは技術的側面にしぼってお話します。

 

 再生医療の可能性は無限ですが、まだまだ技術的に非常に多くの問題を抱えているのも事実です。その代表的な問題点を、ES細胞とiPS細胞に分けてお話していきましょう。

 

 まず受精卵から取りだした万能細胞であるES細胞のいちばん大きな問題点は、他人の遺伝子をもった細胞からつくられた臓器を患者さんに使うため、拒絶反応を含めた生体反応を考慮した治療にならざるを得ないということです。このため免疫抑制剤などを使用するケースが大多数を占めるでしょう。

 

 現在行われている臓器移植も、同じ問題を抱えています。この他人の臓器(細胞)という問題を解決するために、他人の胚細胞のDNAを取りだして自分のDNAと入れ替えたクローン胚の作製が行われてきました。クローン胚の研究の頂点は、ロスリン研究所で行われたクローン羊のドリーです。しかしその後、ES細胞に宿痾のようにつきまとう倫理的な問題と、iPS細胞の樹立により、クローン胚の研究は下火になっていきました。

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 自分の皮膚(真皮線維芽細胞)から作製したiPS細胞は自分のDNAをもつ自分自身の万能細胞のため、ES細胞のような非自己に起因する問題はありませんし、倫理問題もありません。しかし、iPS細胞は通常の皮膚細胞を初期化するために。ヤマナカファクター(山中因子)と呼ばれる4つの遺伝子が必要でした。その1つがc-Mycと呼ばれる発がん遺伝子だったのです。実際にiPS細胞を移植したマウス(キメラマウス)で3分の1にがんができたと、iPS細胞の生みの親の山中教授は報告しています。

ヤマナカファクター

 近年、同じく山中教授は発がん遺伝子であるc-Mycを使わないiPS細胞の樹立に成功していますが、そもそも、iPS細胞であろうと、ES細胞であろうと、万能細胞を生体の外部で増殖させ続けると、染色体変異、遺伝子異常が生じ、次第に蓄積していくことが明らかとなっています。

 こうした遺伝子異常の結果、c-Mycを使わないiPS細胞であっても、がん化する可能性が指摘されており、なお慎重な運用が求められています。

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