不思議Labo

遺伝子ってなに?iPS細胞ってなに?

細胞を用いる医療とその可能性

万能細胞が抱えている問題とは?

投稿日:


Sponsered Link

 すべての事柄は表裏一体、陰と陽、完全なものなどありません。そういう観点からすれば、自然科学の進歩も例外ではありません。自然科学が私たちに数え切れないほどの利益を提供しているのはまぎれもない事実であり、到底その恩恵を少ない紙面で書くことなどかないません。一方で環境問題などの不利益も生じているのも事実です。原子力発電所は私たちに電気というエネルギーを、ほぼ無から有をつくるがごとく無尽蔵に供給してくれますが、ひとたび事故が起これば放射能汚染という重大な危険性をはらんでいます。これと同様に、万能細胞も再生医療、新薬の開発など、自然科学の重要な1分野である医学に大きく貢献していますが、次のような問題があるのも事実です。

 

 ES細胞においては倫理的な問題があります。ヒトの生命の萌芽である胚を壊してつくるということです。さらいES細胞のもとを取りだすためにヒトクローン胚をつくることを認めてしまえば、クローン人間の生産につながりかねないという危惧があります。「ヒトの生命の萌芽である胚を壊してつくる」という問題をクリアしたと考えられるのがiPS細胞ですが、このiPS細胞においても「クローン人間の生産」という倫理問題は常につきまとうでしょう。

Sponcsered Link

 

 さらに実用に際して安全性という問題が常につきまといます。iPS細胞発明の当初、がん遺伝子を導入して作製したこと、遺伝子導入に用いるウイルスががんを引き起こす可能性があるなどの問題がありました。しかし、2008年2月に京都大学のグループが、がん遺伝子を用いないでiPS細胞を作製する技術を確立してこの問題を解決。さらに2008年10月には、同じく京都大学のグループがウイルスを使わない遺伝子導入方法を開発し、1つずつ安全性を高めつつあります。もちろんこれのみで安全性を完全にクリアしたわけではありません。医学には自然科学でありながら、実験科学という側面がとりわけ強いため、やってみなければわからない、時間が経ってみないとなんともいえない、100%は存在しない「不確実」という宿痾(しゅくあ)を、ほかの自然科学以上に内包しています。

iPS細胞の作製

 ただ、私たちは進み続けなければなりません。一番のリスクはリスクを恐れて立ち止まることです。

Sponcered Link

-細胞を用いる医療とその可能性
-, ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

no image

万能細胞で治る可能性のある病気

Sponsered Link  これまで病気の治療のためには、多くの患者から材料の提供を受けて原因を究明し、治験を通して治療薬の開発を進めてきました。ただ、患者数の非常に少ない難病やアルツハイマー病な …

no image

どうやって再生するのか?

Sponsered Link  再生医療による治療のステップは、再生しようとする臓器を構成する細胞(群)を手に入れる、もしくはつくりだすことから始めます。目的の臓器が残っている場合は、その臓器から細胞 …

no image

細胞の自己修復能力と生命の再生能力の違い

Sponsered Link  これまで、細胞の自己複製能力と再生能力についてお話してきました。ここでは、細胞の複製能力と、細胞の集合体である生命の再生能力の違いについてお話しましょう。   …

no image

人の再生能力とは?

Sponsered Link  高度に進化したわれわれのような生命体では、単細胞生物や完全無欠のプラナリアのような身体の再生はできません。しかしまったく再生能力がないわけではありません。一生のうちまっ …

no image

なぜ万能細胞は期待されるのか?

Sponsered Link  万能細胞とは「どんな期間・臓器にもなりうる多分化能をもった細胞」とお話してきました。では、いったいこの万能細胞を使うことでなにが期待できるのでしょうか? ある程度知識を …