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細胞を用いる医療とその可能性

難病への決定打〜アルツハイマー、脊髄損傷〜

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 『臓器の作製〜万能細胞による究極の再生医療〜』では、もし豚などの動物と人間をかけ合わせた生命体をつくることができれば、臓器の完全なコピーができる道は開かれるともいいました。ですが、臓器の完全コピーは、ヒトと豚を合体するという倫理的にきわめて難しい問題を解決しないと前には進めません。一方、難病の解決手段としての再生医療は、これよりずっとハードルが低いと考えられます。多くの場合、難病とは臓器全体の問題ではなく、その臓器を構成する単一の細胞にすべての原因がある場合が多いからです。

 病気の原因を突きとめることは、その病気の治療方法を見つけ出そうとする医学研究者にとってもっとも基本的な最初のステップです。敵がなにものなのか? 病気の原因がなんなのか? 皆目見当がつかないのでは戦い(治療)ようがないからです。

 

 当然、難病とは治療法がない病気ですが、原因がわかっている難病と、いまだにその原因すらわからないものがあります。たとえばアルツハイマー病という病気があります。脳神経をむしばみ、「痴呆」という人間の尊厳を脅かすこの病気の原因にはいまだ謎が多く、明らかな原因も特定されていませんから、決定的な治療方法は当然見つかっていません。

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 一方、治療法がないという意味では、脊髄損傷も同じといえるでしょう。脳と手足を動かす筋肉とをつなぐ電線のような役割をするのが神経細胞ですから、事故や病気などによって脊髄神経が完全に断裂してしまった脊髄損傷の患者さんは、自分で立つことも、歩くこともできません。このように明らかな原因がわかっても、治療方法がない、対処のしようがない、あきらめざるをえない病気もあります。

脊髄損傷

 では、再生医学の手法を用いると、どういうことが可能になるのでしょうか? まずアルツハイマー病の患者さんからほんの少しの細胞を抽出し、その細胞を用いて神経細胞を再生し、このつくられた神経細胞で非常に多くの有意義な実験が可能になります。なにしろ、実際の患者さんとまったく同じ神経細胞ですから、ある意味、擬似的な人体実験ともいうべきもので、アルツハイマー病の原因を探る研究が飛躍的に加速することでしょう。

 脊髄損傷の患者さんの場合はもっと簡単です。再生させた脊髄神経の神経細胞は自分自身のものですから、それを断裂した部分に移植すれば、まさに決定的な治療になるのです。

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