現在、再生医療においては、臨床研究や自由診療が実施されています。自由診療は保険診療と異なり、臨床研究を実施していなくても医師の裁量のもと治療することが可能です。そのため、十分な効果が得られていない場合や、安全性が十分確認できていない場合でも治療が実施できてしまうという欠点があります。このため臨床研究の行われていない自由診療は行うべきではありません。また、他国で十分や臨床研究が行われても、第三者による監視機関である倫理委員会は必須です。
現在、多くの医師が培養皮膚を用いた治療を自由診療にて提供していますが、これはアメリカの臨床研究がひととおり終了し、有効性と安全性が認められたものです。一部の自由診療を行う医療機関では、安全と有効性の確認のないまま実施するという現状も決してめずらしいことではなく、われわれの周りに存在しています。
医療とは違いますが、「◯◯ががんに効く」という広告をよく見かけます。しかし、実際にはなんの効果も実証されていないという場合がよくあります。医療に携わる人間は、常にモラルを守ることが必須であり、なによりもまず患者さんが安心して治療を受けることができ、健康を維持して幸せに暮らせるようにすることが重要であると考えています。そのためには、副作用のない、もしくは副作用の少ない安全な治療であることを証明するだけではなく、科学的根拠にもとづく疾病の原因や病態を解明していく必要があります。さらに治療においてどのような効果があるのかを示していくようにしていくことも必要です。そのために、臨床研究をしていくことは重要であると思われます。
臨床研究について調べると、「人を対象として用いて、疾病の予防方法、診断方法および治療方法の改善、疾病原因および病態の理解ならびに患者の生活の質の向上を目的として実施される医学研究」という説明が見つかります。この説明にあるように、「患者の生活の質の向上」のためには、臨床研究を実施することが重要であり、それが医療の進歩に欠かせないといえます。そして臨床研究を実施するにあたっては、なによりも「患者の生活の質の向上」を優先的に考えていくことが重要です。