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 再生医療。文字通りに解釈すると「再生」を目的にした「医療」となります。しかし、もともとわれわれには再生能力が備わっていますから、小さなケガなら治るのが当たり前です。多くの人はすり傷にキズ絆創膏やカットバンを貼ります。やがてその傷は治ります。ではキズ絆創膏やカットバンは再生医療なのでしょうか? いいえ違います。FGF(線維芽細胞増殖因子)という薬剤は、肉を盛り上げることによって傷の再生をうながします。ではFGFは再生医療でしょうか? これも違うようです。骨髄や血の一部を用いて血管を再生する治療がありますが、これは再生医療でしょうか? だんだん近づいてきましたが、これも違います。

 

 いくら医学が発達して、スーパーキズ絆創膏や夢の新薬ができても、また移植医療が進んでも、ある要素を満たさなければ、それは再生医療ではありません。

 

 そのキーワードは細胞です。人類は有史以前から医療行為を行ってきました。外科手術の原型が石器時代の壁画に描かれていますし、薬草を薬として飲むのも有史以前から行われてきたはずです。ある意味、現在の医療や治療はすべてその延長線上にあるのです。

 

 どんな天才的な外科医が行う手術でも、石器時代の壁画にある手当て(手術)と基本は同じ行為です。それは刃物を用いて人体に傷をつけ、病気やケガを治療するというコンセプトからすれば、まったく同じカテゴリーに入ります。

 

薬に関しても同じことが言えます。どんなに優れた夢の新薬といえども、化学物質(自然に存在するものであれ人工的に合成したものであれ)を体内に取り込むというコンセプトからすると、有史以前の薬草治療と同じです。

 

 しかし、細胞を用い、臓器を細胞レベルでコピーする再生医療はまったく異なります。では、どこが根本的に違うのでしょうか? 

 

 そもそも、われわれ動物(人間)には自己修復能力(再生能力)が備わっており、手術や抗がん剤など、すべての最先端医療含め、われわれがもつ自己修復能力(再生能力)を前提に行われています。言い換えれば、われわれの自己修復能力(再生医療)がなければ、手術をするとかえって傷口が大きくなり悪化しますし、がんの切除などできません。手術のために開いたお腹が、まったくふさがらないのですから。

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 また、がんの切除手術において臓器を切除する量や範囲は、人間のもつ自己修復能力(再生能力)の範囲内でのみ行われています。たとえば、がんを切り取るためい肝臓のすべてを切り取ってしまえば生存できなくなるので、それは不可能です。ただ、肝臓は3分の1残っていれば自己再生が効く臓器ですから、その範囲を見極めてがんを切除します。しかし、3分の2以上をがんにおかされてしまった肝臓がんの患者さんは、手術不可能となります。

 

 がんの手術のみならず、外科手術自体、われわれに自己再生能力が備わっていないとまったくまったく成り立たない治療方法です。骨折をピンでとめて治しても、手術のために切開した皮膚の傷は自己再生能力でふさがるのです。ピンでとめた骨折部も自己再生能力で統合し、ある一定期間ののちピンを抜くと骨はくっついています。

 

 薬にしても同じ考えが成り立ちます。薬は単なる化学物質です。それがなぜ薬と呼ばれるのでしょか? 副作用のない薬はありません。副作用の許容範囲も、薬という毒により傷害・損傷された肉体が復活できる程度であれば一過性の副作用ですみ、それ以上に治療効果が上がれば、それは薬と呼ぶことができます。

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 たとえ薬であっても、われわれが本来もっている再生能力以上の量が使われれば、それはもはや薬とは呼べず、命を奪う毒となり得るのです。ジギタリスという植物があり、その葉を原料とした心臓の薬があります。この薬は非常い有効な強心剤として用いられていますが、使用量を誤ると命を落とす恐ろしい毒であるという一面もあわせもっています。患者に薬を使う場合、その副作用から立ち直る力の範囲を見極めるのも医師の仕事です。

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 エイズウイルスを完全に殺してしまう化学物質も存在します。しかし、それは単なる消毒薬であって、薬と呼ばれないのは、われわれがその毒によるダメージから完全に立ち直るさ自己再生能力をもっていないからです。薬も手術も、人間が本来もつ自己修復能力(再生能力)を手助けする道具にすぎません。いわば、いつまで経っても主役にはなれない脇役のようなものです。脇役が脇役になれるのは、自己修復能力(再生能力)という主役がいる場合だけなのです。

 

 もうおわかりのように再生医療とは、この主役である人体の自己修復能力(再生能力)を扱う医学なのです。決して単純に「再生させる医療」ではないのです。

 

 肝臓がんの場合、正常な肝臓組織を含めてがんを切除しなければなりませんが、切除する量は本来われわれがもつ「自己再生・修復能力」を超えては切除できません。脇役は主役の言いなり、主役の力量の範囲でしか働けません。もちろんそこいおのずと限界がでてきます。

 

 しかし、もし肝臓そのものを完全に再生してしまう技術、人体の自己修復能力(再生能力)をコントロールする技術が確立されたらどうなるでしょうか?「肝臓がん? そうか、全部取っちゃえ! 胃がん? 移転してる? 移転してる骨も肝臓も全部あわせて切除しちゃえ。ゼロから再生させればいいじゃないか!」。

 

 こういう会話が可能になるのです。この有史以来、アンタッチャブルだった人体の自己修復能力(再生能力)をコントロールするパラダイムシフトが再生医療なのです。

 

 脊髄損傷もしかり。脊髄損傷は薬でも手術でも絶対に治りません。なぜなら、われわれがもつ自己再生能力を超えて、不可逆的な変化を起こしてしまったからです。 

 しかし、細胞を使った医療なら治療可能になります。われわれのもつ「自己再生・修復能力」の範囲、その限界、土俵そのものを人間の手で変えてしまうのが再生医療なのです。

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