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遺伝子ってなに?iPS細胞ってなに?

DNAと遺伝子、ゲノム

受精卵から体ができるまで

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卵子のゲノムと精子のゲノム

 

 1個の受精卵が細胞分裂を繰り返して、60兆個の細胞からなるといわれるヒトの体をつくりあげます。1つの細胞がDNA複製を行い、2個の細胞に分かれることの繰り返しですから、体内の細胞はすべて同じ遺伝情報をもっています。それにもかかわらず細胞が分化して、さまざまな種類の組織や臓器ができるのは、細胞によって働いている遺伝子と休んでいる遺伝子の組み合わせが違うからです。

 

 受精卵は、精子と卵子のゲノムが融合してできます。精子のゲノムだけが倍加して46,XXの細胞になると、胎盤系の組織が増えて胞状奇胎になり、胎児はできません。46,YYは生存できません。Xにはたくさんの遺伝子が乗っているので、Xなしでは生存できないのです。逆に卵子のゲノムが倍加すると胎盤系の組織はできず、胎児側だけになりますが、正常ではなく、臓器や組織が不規則に混じり合った“奇形腫”です。

 

 卵子や精子に含まれる遺伝子には、それぞれ特有の刷込みのパターンがあるため、精子と卵子のゲノムが対になることで、はじめて正常な胎児と胎盤がそろうのです。

 

受精卵から胎児へ

 

 ところで、正常な受精卵が2 回、3回と分裂した段階では、それぞれの細胞から完全な個体ができます。確認されたのは世界で1例だけですが、カナダの五つ子は一卵性だということです。受精卵が8個に分かれた段階でも、それぞれの細胞が正常な子になることができるのです。

 

 受精後、5日目あたりから、将来は胎児になる部分と、胎児以外の部分になる細胞が分かれはじめます。やがて胚葉の分化がはじまり、20日すぎには神経管などの構造が現れ、8週目には、まだ頭の先から尾まで3cmほどの大きさですが、頭、目、胴に手足らしい形まで姿を現します。このあたりから少し後の時期にかけては、風疹などのウイルス、ネコのトキソプラズマ(胞子虫の一種)の感染、アルコールその他の化学物質などの影響を受けて、奇形になりやすいのです。サリドマイドバビーも、この時期の問題でした。なお、この時期は胎芽、妊娠3カ月より後は胎児と呼びます。

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組織や臓器の分化と遺伝子の働き

 

 成人の体をつくっている細胞を調べると、脳では少なくとも3000の遺伝子が発現しており(3000種類のmRNAを検出)、肝臓でも2000を超えています。他方、唾液腺、副甲状腺などでは、同じデータで、20とか40種類ほどしか働いていません。1000ほどの遺伝子の発現が見つかっている臓器としては、心臓、膵臓、睾丸などがあります。細胞の種類によって、働いている遺伝子の数や種類には大きな差があるのです。

 

 受精後の早い時期には、それぞれの細胞が活発に分裂・増殖しながら、特定の組織や臓器へ分化していくので、成人いくらべて多くの遺伝子が働いている細胞が多いのでしょう。分化は長期にわたる遺伝子の点滅ですから、多くは刷込みが絡んでいると思います。なお、体の構造を決めるホメオボックス遺伝子や、特定の種類の細胞の分化に必要な遺伝子が、次々に見つかっています。

 

 胎芽期に欠かせない遺伝子が変化すると、そもそも妊娠と気づかれる前に消えるか、流産になるので、これまでは遺伝子レベルの研究が難しかったのです。ヒトゲノム計画の進展によって遺伝子をしらみつぶしに調べれば、これらを含めてヒトの遺伝子の全貌がわかるでしょう。それらしい遺伝子が見つかったら、マウスなどの実験動物でその遺伝子を壊して(ノックアウトマウスなど)影響を見れば、遺伝子の働きを推定することができます。

 

再生医療とiPS細胞

 

 感染や外傷により、障害を受けた組織や臓器の回復をはかるためには、特定の種類の細胞への分化や増殖が必要ですが、成人の体を構成している細胞の多くは、このようなことができません。そこで期待されているのがiPS細胞の利用です。iPS細胞はさまざまな組織や臓器に分化することができますので、再生医療の分野で実用化することが期待されます。最初のiPS細胞の作製には、“がん”にかかわる遺伝子が使われたり、遺伝子の導入にウイルスが使われたりしましたが、その後、方法が改善され“がん”のリスクが大きく減ったと思われるので、再生医療への応用の可能性がでてきたのです。実際にマウスなどでiPS細胞から、さまざまな組織や臓器をつくった例が報告されており、ヒトでも実用化が近づいていると思われます。なお2011年8月、マウスのiPS細胞から精子をつくったところ、卵子を受精させて子が生まれたという発表がありました。

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-DNAと遺伝子、ゲノム

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