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遺伝子診断

遺伝子やDNAを目で見る

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PCRでDNAを見る

 

 DNAを目で見る方法は、もっとも広く使われているのがPCR(polymerase chain reaction:ポリメラーぜ連鎖反応)です。長いDNAのうち一定の区間を(通常は1kbあたりまで)、DNAポリメラーぜ(DNA複製酵素)を使って増やす(複製する)のです。複製する区間の片端には、DNAの二本鎖のうち片方の鎖に相補的な20塩基ほどの一本鎖DNAを準備します。DNA複製の起点になるプライマーです。反対側には他方の鎖に相補的な、同じ長さのプライマーを準備します。

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 まず、患者の血液などからDNAを抽出します。90℃ほどに加熱すると、2本の鎖が互いに離れます(熱変性)。その状態で2種類のプライマーを加え、たとえば60℃弱くらいで付着(二本鎖の形成)させます。

 

 続いて70℃強に温度を上げると、反応液にあらかじめ入れておいたDNAポリメラーぜによって、プライマーの3’端から鎖が伸び、両プライマーに挟まれた区間が二本鎖になります。鎖の材料となるA,G,C,Tの4種類を含む化合物も、あらかじめ反応液に入れておきます。

 

 ここまでの1サイクルが3〜5分です。つまりDNAを数分ごとに2倍に増やせるのです。1時間で12サイクルとすると、2の12乗ですから4096倍です。たいしたことはないように思いますが、20サイクル後には100万倍を超えます。25サイクルで3300万倍です。2〜3時間も反応させて、得られたDNAを電気泳動して蛍光色素で染めれば、増えたDNAが横一線の光の帯(バンド)として、肉眼でも見えるのです。

 

PCRで診断する

 

 遺伝子に欠失があれば、当然ながら患者のDNAでは出るべきバンドが見えなくなります。また、PCRで増幅した区間にSNPがあり、それが制限酵素の認識部位になれば、増幅したDNAを制限酵素で切ることで、多型が検出できます。アイソトープ(放射性同位元素)も使わず、何よりもごく微量のDNAがあれば短時間のうちに増やして解析に使えるので、爆発的に普及しました。発明者のマリス(K.B.Mullis)は、1993年にノーベル賞を受けました。

 

 なお、ごくごき微量のDNAを検出する場合があります。犯罪の捜査とか、考古学で大昔のわずかな試料しか得られないのが例です。その場合には、2段階のPCRを行います。通常のPCRでまずDNAを増やし(たとえば25サイクル)、増えたDNAの内側にプライマーをおいて、さらに同様のPCRを行うのです。デュアルPCRとか、入れ子のように内部にプライマーをはめ込むので、ネステッドPCRと呼びます。着床前診断などで、1つの細胞を使って遺伝子を調べる場合にも、この技術を使います。

 

サザン法でDNAを見る

 

 患者の細胞などから抽出したDNAはゲノムの全てを含むため、制限酵素で切ると、さまざまな長さの何百万、何千万のDNA断片ができます。電気泳動すると、泳動の開始部分から終了部までの全長にわたって、ほとんど均一に分布します。特定の遺伝子やDNAを見分けることは、とてもできません。

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 目的の遺伝子や多型を含むDNAを目で見るためには、サザン法を使います。電気泳動の後で、ゲルに含まれるDNAをニトロセルロースなどの膜(フィルター)に写し取るのです。遺伝子を検出するためにはプローブを使います。これは、目的の遺伝子などのDNAをアイソトープで標識したものです。いいかえれば、遺伝子がクローン化されて手元になければ、この方法は使えません。細かい話は省略しますが、プローブがフィルター上の相補的なDNAに結合し、最終的にはX線フィルム上に、遺伝子やDNA多型を含む部分のDNAが黒いバンドとして見えるのです。

 

 遺伝子なら欠失や挿入の有無で、また、多型なら切れるか切れないかなどによって、バンドの位置が変わります。この方法の欠点は、アイソトープを使うことと、PCRに比べて必要なDNAの量が多いことです。

 

 他方、PCRは塩基配列がきちんと決まっている部分は検出できますが、似ているという状況では使えません。サザン法ですと「機能がわからない遺伝子がヒトで見つかったが、これはマウスやショウジョウバエの、どの遺伝子に対応するのだろう」などと調べることができます。塩基配列が似ていれば(多少は違っていても)検出できるのです。

 

 「これはマウスの同じ遺伝子だ」とわかれば、その遺伝子を壊して影響を見ることができます。さまざまな動物を比較する進化レベルの研究には、欠かせない技術なのです。

 

DNAの塩基配列を見る

 

 遺伝子の全長あるいは一定の範囲の塩基配列を知りたいこともあります。広く使われているのがサンガー法です。ジデオキシ型の塩基を使うので、ジデオキシ法とも呼びます。

 

 「DNAの構造と複製」で説明したように、DNAは5’から3’へと進みます。DNAの両側の支柱にあたる部分は、五炭糖とリン酸が交互につながっていて、糖の3’の位置の水酸基(OH)に、リン酸基を介して次の糖の5’の炭素が結合します。この繰り返しで鎖が伸び(複製が進み)ますが、3’のOHがHに変わると鎖の延長ができず、そこで伸びが止まります。

 

 DNAの糖は2’の位置がもともとHです(RNAではOH)。3’もOHに変わると2ヵ所がHですから、ジデオキシ型(2ヵ所の酸素がない)です。

 

 PCRと同じようなプライマーを使い、少しずつ鎖を伸ばしますが、伸ばす反応を4本の容器に分け、それぞれにA,C,G,Tのジデオキシ型(ジデオキシ型の糖をもつCなど、単にジデオキシCと表記)を1種類ずつ少量混ぜておくのです。プライマーは、アイソトープか、それぞれ異なる色の蛍光色素で標識しておきます。

 

 たとえばC反応の容器では、通常のCに一定の割合でジデオキシCを混ぜてあります。プライマーから複製をはじめ最初のCになると、分子のうち何%かはジデオキシCを取り込むため、鎖の伸長が止まります。その位置で「プライマーから何番目の塩基はCだ」とわかります。次のCでも、その次のCでも同じことが起こります。

 A,G,Tについても同様なので、電気泳動すれば、ここはA、次はT、続いてGとCなどと塩基の配列がわかるのです。最近では、板状のゲルではなく毛細管を使って泳動し、それぞれ異なる蛍光色素で標識した塩基の配列を自動的に検出して波形を描く自動式の装置(オートシンクエンサー)が使われています。

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