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遺伝子で決まる性質や病気

1つの遺伝子で決まる性質や病気

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劣性遺伝と優性遺伝

 

 遺伝子は父と母から受け継いだものが対になっています。それぞれが対立遺伝子です。対の両方が揃った場合にかぎって表に出るのが劣性遺伝です。ABO式血液型でいえばO型です。

 

 他方、AやBの対立遺伝子は必ず表に出ますので、常染色体声優性遺伝(以下、優性遺伝)です。劣性の形質は、別に性質が劣っているという意味ではなく、対の片方だけでは表に出ないという意味です。酵素の遺伝子の異常は、ほとんど劣性遺伝になります。メカニズムをみましょう。

 

劣性遺伝のメカニズム

 

 ある酵素の遺伝子について、正常な対立遺伝子をA、半分ほど欠けて酵素をつくれなくなった対立遺伝子をaとしましょう(血液型とは関係のない記号です)。A対立遺伝子を揃ってもつAAの人は、当然ながらまったくの正常です。aaの人は酵素をつくれないので、その酵素が分解すべき物質(気質)が体内にたまるか、または気質に酵素が働いてできる産物が不足するか、いずれかの理由で病気になります。

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 Aaの人はどうでしょうか。それぞれの体内の中で、A対立遺伝子は酵素をつくりますがaはつくれませんので、正常な人の半分の酵素ができます。人の体にはゆとりがありますので、酵素の量が半分あれば日常の生活にまったく問題はなく、病気になりません。このように正常な対立遺伝子を隠している人を、保因者と呼びます。

 

 なお、AAやaaのように、同じ対立遺伝子が揃っている人をホモ接合体(以下ホモ)、Aaなど違う大尉率遺伝子を持つ人をヘテロ接合体(以下ヘテロ)と呼びます。つまり、ヘテロが保因者になるのが劣性遺伝です。

 

 ちなみにABO式血液型の遺伝子は、9番染色体に乗っています。この遺伝子は血液型を決める大きな分子に、小さな化合物を付け加える酵素の遺伝子なのです。A遺伝子とB遺伝子がつくる酵素は、付け加える化合物がわずかに違います。O遺伝子では酵素機能を失っているため、なにも付け加えられないのです。

 

優性遺伝のメカニズム

 

 優性遺伝のメカニズムが、いくつか知られています。一つは異常な対立遺伝子の産物の影響が強く、正常な産物を圧倒してしまう状況です。ハンチントン病の遺伝子には、CAGという3つの塩基が繰り返した部分があります。ハンチントン病の患者では、この繰り返しが大きく延長しています。

 

 CAGはグルタミンというアミノ酸の情報なので、患者の遺伝子産物ではグルタミン・グルタミン・グルタミンという繰り返しが大きく延長しています。するとその遺伝子が活動している神経細胞は、アポトーシス(細胞の自殺)を起こして死んでしまいます。正常な対立遺伝子の産物があっても、細胞自体が死んでしまうのでは主部になりません。

 

 もう一つのメカニズムは、遺伝子産物がそのままでは機能をもたず、いくつか集まることで機能があわられる場合です。つまり、産物はサブユニットにすぎないのです。正常な産物をn、異常な産物をNとしましょう。優性遺伝では、表に出る対立遺伝子を大文字で書く習慣です。

 

 Nとnはそれぞれの細胞の中で同じ量だけつくられます。nがそのまま働くことができれば劣性になるのですが、Nもnもあくまでサブユニットで、そのままでは働けません。これらが2つ集まって機能のある最終産物ができるとしましょう。NN、Nm、nnは、順列組み合わせで1:2:1の割合になります。

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 nnは正常、NNは異常な最終産物で機能はありません。問題はNnです。2つのサブユニットがひものようにより合わされて、ロープができると考えてみましょう。Nは異常なのでしなやかに曲がることができず、Nが1本でも混じると、正しい構造のロープができないのです。つまりNNもNnも働かず、まともなのはnnだけですから、1/4しかありません。これではさすがに不足して、発病するのです。つまり、ヘテロが保因者にならず発病するのが優性遺伝です。

 

 プロコラーゲン線維のロープにカルシウムが沈着して骨ができますが、骨形成不全症の中には、このようなメカニズムによる優性遺伝の病型があります。またサブユニットが3本集まって最終産物をつくる場合もあります。そうなると、正常なnnnは、全体の1/8しかありませんので、発病は間違いありません。対立遺伝子は、異常なNをつくるくらいなら、なにもつくらないでいてくれるほうが、悪影響が少ないのです。

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伴性遺伝とは?

 

 血友病やいわゆる赤緑色盲(色覚異常)の患者は、男性ばかりです。女性の患者は、ごくごく珍しいのです。これらは、病気の原因となる遺伝子が、X染色体に乗っている伴性遺伝です。

 

 性染色体は女性ではXが2本、男性ではXとYが1本ずつです。X染色体上に1/1000の割合で見つかる対立遺伝子の異常なら、Xが1本だけの男性は1000人に1人が患者です。他方、女性の2本のXがそろって異常になる閣率は、その2乗なので100万分の1です。男性に1万に1人の病気なら、女性では1億に1人です。女性の患者を見かけないのも当然でしょう。

 

 ところで女性の2本のXのうち、1本だけが異常の場合には、患者ではなく保因者になります。保因者の女性から男の子が生まれる条件を考えましょう。X染色体上の正常な対立遺伝子Hと、異常な対立遺伝子hのいずれが子に伝わるかは50%の確率ですから、平均して男児の半数はhを受け取って患者、半数はHで正常になります。女児はHを受け取ればまったく正常、hなら保因者になりますが、やはり50%ずつの確率です。

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 男性が患者の場合には、1本しかないXがhを乗せていますから、Xを受け取る女児はすべて保因者、Yを受け取る男児はまったく正常になります。したがって、父から息子に伴性遺伝の形質が伝わることはなく、もし伝わればそれだけでXとは無関係と判定できます。

 

伴性遺伝のメカニズム

 

ここまで書くと、「伴性遺伝と同じだ」という声が聞こえてきそうです。実はちょっと違うのです。女性のXのうち1本は、胎生の十数日に不活性化します。「それなら、Xが1本の男性と同じではないか?」というのは、もっともな疑問です。女性のどちらのXが不活性化するかは、その時点で細胞ごとにランダムに決まります。HHやhhの組み合わせなら、どちらが不活性化しても同じですが、Hhはどうでしょう。

 

 2本のうちHを乗せたXが不活性化した細胞を見てみましょう。正常なHが不活性化しますので、その細胞の遺伝子産物の活性はゼロです。一方、hを乗せたXが不活性化すると、Hを1本含む正常な男性の細胞と同じで、100%の活性になります。つまり、活性が0%と100%の細胞が同じ数だけできます。平均すると50%ですから、発病を免れて保因者になるのです。

 

ミトコンドリアが決める母系遺伝

 

 母系遺伝というと、伴性遺伝とまぎらわしい感じですが、まったく別ものです。核の中にある染色体ではなく、細胞質に散らばっているミトコンドリアの問題です。ミトコンドリアには小さな環状のDNA(16000塩基対ほど)が含まれていて、エネルギー代謝などにかかわる遺伝子がいくつか働いています。

ミトコンドリア

 太古の時代、地球の大気には酸素がありませんでした。原始的な生命は、海底から噴き出す硫化物などをエネルギー源としていたのです。28億年前ほど前にラン色細菌(シアノバクテリア)が突然変異を起こし、太陽光をエネルギー源に使えるようになりました。太陽の光は無尽蔵なのでシアノバクテリアが大発生して酸素をつくり、それまで嫌気的だった大気が、大量の酵素を含む現在の姿になったのです。

 

 酸素は当時の生物にはきわめて有害で、そのため絶滅した生物もかなりありました。真核生物(細胞中に核をもつ生物)のごく一部は、酸素を利用してエネルギーのつくることのできる細菌を細胞内に取り込んで、共生関係をつくることで乗り切ったのです。ミトコンドリアは、共生した細菌の子孫です。ミトコンドリアの遺伝子は、核の遺伝子とは異なる遺伝記号を一部に使うなど、ユニークなところがありますが、起源を考えれば、当然でしょう。40億年の生命の歴史音うちで、20億年ほど前の話です。

母系遺伝

 細胞質は卵子のものがそのまま子に伝わるので、ミトコンドリアは母から子へ伝わります。生死のミトコンドリアは尾の根元に並んでいて、運動のエネルギーを供給していますが、受精に際しては頭部だけが卵に入りますので、子には伝わりません。母からは、男女を問わず、すべての子に伝わります。したがって祖母、母、娘と女性でつながっていれば、何世代でもそのまま受け継がれますが、間に息子が入ると、孫には息子のお嫁さんのミトコンドリアが伝わることになります。

 

 母系遺伝で伝わる病気としては、ある種の糖尿病や、網膜の変化で失明するレーベル視神系委縮症などがあります。

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  1. […]  ここまでは、1つの遺伝子の変化があれば病気、なければ健康という、すっきりした遺伝でした。対立遺伝子は1個(優性や伴性)か、2個(劣性)がかかわっています。ところで5種類とか10種 […]

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  3. […]  ハンチントン病が例です。原因となる遺伝子の内部にあるCAG反復配列の延長によって、遺伝子産物であるハンチントンというタンパク質が大きく延長し、結果的に神経細胞の自殺が誘 […]

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