Sponsered Link

多因子遺伝とは?

 

 ここまでは、1つの遺伝子の変化があれば病気、なければ健康という、すっきりした遺伝でした。対立遺伝子は1個(優性や伴性)か、2個(劣性)がかかわっています。ところで5種類とか10種類(対立遺伝子は10とか20)など、複数の遺伝子がかかわる病気や性質があるのです。というより、1の形質のほとんどは、このようなものなのです。これが多因子遺伝子ですが、環境の影響もありますので、多因子病と呼ぶこともあります。

 

 1つの遺伝子でも病気と健康がわかれるような対立遺伝子の変化は、100%の機能をもつ(正常)か、0%(数%などもありうる)かという、クリアーカットなものです。多因子病にかかわる遺伝子の変化は、それぞれの対立遺伝子の働きが10%低い、20%低い、あるいは逆に10%高いといった、個人差レベルの違いなのです。

image1 (3)

 ある対立遺伝子の働きが10%低くても、発病はしません。ただし同じ多因子病にかかわる5種類の遺伝子について、たまたま働きが悪い対立遺伝子を4個、5個ともっていると、ぎりぎり持ちこたえている状況になります。そこに不摂生が重なると、限度を超えて発病するほかないでしょう。その限度にあたるのが閾値です。

 

 糖尿病、高血圧、肥満などの生活習慣病、アレルギー、多くの“がん”が多因子病であることから、注目されているメカニズムです。いずれも数百万人、千万人レベルの患者がいますので、問題が大きいのです。また、身長や知能など正常な形質の多くも、多因子遺伝です。

 

双子でわかる遺伝子のつながり

 

 単一遺伝子病(形質)では、祖父から父へさらに子へなどと、対立遺伝子をたどることは、難しくありません。多因子遺伝のように、それぞれの対立遺伝子の影響が小さいと、対立遺伝子の働きや伝わり方を見分けることは、難しくなります。そのような場合に、遺伝子がからんでいるか否かを見極めるためには、双子を調べるのです。

 

双子には2種類ある

 

 双子には、一卵性と二卵性があります。一卵性は1つの受精卵が発生の途中で偶然に2個に分かれたものです。当然ながら性も同じで、揃って男かそろって女かのどちらかです。

Sponcsered Link

2種類の双子

 二卵性の双子は、同時に排卵された2個の卵子が、それぞれ別の精子によって受精したので、同時におなかの中にいますが、遺伝的には普通の兄弟や姉妹と同じで、すべての遺伝子の平均で50%の共通性があります。半数が男女の組で、男男と、女女の組が1/4ずつです。

image1 (4)

 図で両親はA、B、C、Dという4種の対立をもつと仮定します。図の右側で、双子のうち1人がACとします。他方はAC、AD、BC、BDのいずれかで、確率は1/4ずつです。ACなら2人は完全に一致、ADかBCなら50%の一致、BDなら0%の一致ですので、平均すると50%です。ほかの遺伝子でも同じことで、すべての遺伝子の平均でも50%の一致になります。

 

双子を比較すると遺伝子の影響がわかる

 

 双子の組を集めて形質や病気の有無を比較すると、遺伝子の影響がわかります。一卵性で二卵性より一致率が高ければ、遺伝の影響があり、差がなければ遺伝の影響はないのです。双子は一緒に胎内で過ごし、生まれてからもいっしょに育つので、時代の違いなど環境の影響、いわば雑音に悩まされずに遺伝の影響を知ることができます。

 

 一卵性で別々の育った組を調べることができれば、環境の影響の有無や程度がわかります。遺伝的にはまったく同じですから、少しでも違いがあれば環境の影響です。

 

 一致率の例を紹介しておきましょう。。一卵性と二卵性の間に大きな差があれば、一見して遺伝の影響が強いとわかりますし、差が小さければ遺伝の影響が小さいとわかります。意外なところに遺伝子の影響があると、驚かれた方も多いのではないでしょうか。

 

 具体的にどれだけ遺伝の影響があるのかを知るためには、遺伝率を計算します。一卵性と二卵性の組を集めて、それぞれの種類の双子について、たとえば身長の分散を計算し(標準偏差の計算に使う分散です)。得られた値(二卵性の分散はDZ、一卵性の分散はMZ)から(DZ-MZ)/DZを計算すれば、身長の遺伝率が得られます。

 

 一卵性の組の間にまったくの差がなければ、遺伝率は1です。その形質は遺伝だけで決まるのです。一卵性と二卵性の間にまったく差がなければ遺伝率はゼロです。

Sponcered Link