生命の基本単位である遺伝子と容器としての細胞の記事一覧


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 細胞はその内部の構造から原核細胞真核細胞に分けられます。この2つの細胞でもっとも大きな差異は、原核細胞に細胞核がないことです。細胞核がないと、みなさんをなにを連想するでしょうか? いままで生命をつむぐ源はDNAであり、そのDNAは細胞核の中に存在していると書いてきましたし、以前学校で細胞核にDNAがあると学んだ人は、原核細胞にはDNAがないと思った人もいるのではないでしょうか?

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 実は原核細胞には、細胞核がなくても遺伝担体(DNA)はしっかりと存在しています。ただ、存在の仕方が異なっているだけなのです。原核細胞のDNAは核様体と呼ばれる形で凝縮し、多くは細胞膜に付着して存在しています。また、原核細胞の遺伝担体(DNA)は染色質であるクロマチンを欠いているので、厳密には染色体というものは存在しません。

 

 一方、真核細胞では、DNAは1本または複数本の分子から構成される染色体と呼ばれる構造になっています。染色体は、DNAがヒストンと呼ばれるタンパク質に絡みついて、しっかりと凝縮した状態になっています。真核細胞の場合、すべての染色体のDNAは核の中に閉じ込められていて、核膜によって細胞質と隔てられています。

 

 そのほかにも、原核細胞と真核細胞の違いはいくつかあります。原核細胞では、タンパク質をつくるのに必要なリボソームは細胞内に浮遊しているので細胞質基質がザラザラしていますが、真核細胞ではリボソームの主要な部分が小胞体に結合しているため、細胞質基質はザラザラしていません。

 

 以上、非常に多くの違いが認められる原核細胞と真核細胞が、もっとも違うのは細胞内小器官でしょう。ミトコンドリアや葉緑体などの細胞内小器官は、真核細胞では何種類かが存在し、またそれらが独自のDNAをもつものもあります。

 一方、原核細胞にはそれが認められません。真核細胞に認められる細胞内小器官はもともと別の細胞(生物)であり、共生によって細胞小器官となったとする「細胞内共生説」が、現在ではほぼ認められているように、生命が常に別の生命と協力しあって命の連鎖をつないできた証拠がここにもあるのです。


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 スピルバーグが映画化し、全世界で大ヒットを飛ばした『ジュラシック・パーク』をご覧になった方は多いことでしょう。コハクの中に閉じ込められ化石となった蚊が大昔に吸った恐竜の血液中に残されていたDNAを使って、実際に恐竜を復活されてしまうストーリーです。この話がまんざらフィクションというと一言で片づけられないのは、DNAが損傷なしに保存されていれば、その種を復活させることが必ずしも非現実的ではないからです。人類はまだそこまでの技術レベルまでは到達していないのですが、再生医療の発展とともにいずれ実現する日がやってくるかもしれません。

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 さて話を本題の「細胞と遺伝子」に戻しますが、遺伝子はDNAという物質の中に保存されています。このDNAは、何らかの形で損傷を受けないかぎり、細胞の死とは関係なく、いつまでも存在し続けます。すなわち、遺伝子は死なないと考えられています。一方、細胞は、私たちの体で常に古い細胞から新しい細胞に入れ替わっている事実からもわかるとおり、やがて死んでしまいます。このことを実験的に調べたのがアメリカの生物学者レオナルド・ヘイフリックでした。

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 ヘイフリックは、培養している繊維芽細胞を継代培養(けいだいばいよう)していくと、約50回細胞分裂したあとに分裂しなくなるという観察結果を得ました。このことから、「ヒト繊維芽細胞は無限に増えることはできず、有限の細胞分裂ののち、分裂する能力を失う」という仮説を提唱しました。この現象はヘイフリック限界とも呼ばれ、現在ではその理由はテロメアDNAの長さによるものと考えられています。テロメアはDNAの末端に存在する繰り返し構造のDNA配列ですが、細胞が分裂するたびに短くなっていきます。ある一定の長さになると、細胞は分裂できなくなります。このように細胞は、生きていくために分裂を繰り返しますが、分裂ができなくなるとやがて死んでしまいます。

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 遺伝子の本質であるDNAそのものは、生も死もないたんなる物質にすぎないにも関わらず、そのDNAがつむぎだす細胞(生命)には終焉(死)があることに興味がつきません。生命の本質は、もしかしたらどんなに自然科学が発達しても解明できないかもしれませんが、生命現象は今後さらに探求がなされることでしょう。

 


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 細胞とはなんでしょうか?

 

 国語辞典を引くと、「生物の体を組み立てているいちばん小さな単位」と記載されています。どうやら私たちの体は、この細胞からできているようです。

 

 細胞は、一般的には数ミクロン程度の大きさしかなく、哺乳類で一番大きな細胞である卵子でも100ミクロン程度で、決して肉眼で見ることはできません。しかし17世紀、イギリスのロバート・フックが、顕微鏡でコルクガシのコルク層の小片を観察し、細胞を発見しました。19世紀には、ドイツの生物学者であるテオドール・シュワンマティアス・ヤコブ・シュライデンが、細胞は生物共通の構造で発生の基本単位であるとする細胞説の基礎を築きました。

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リタ・グリアによるロバート・フックの肖像

(写真:Wikipedia)

 

 こうして発見された細胞ですが、1つひとつの細胞が独立して生きていくような単細胞生物もいれば、同じような細胞が集まってコロニーや群体を形成して一緒に生きていくようなもの、1つひとつの細胞に分かれては生きていけないほどまで特殊化した多細胞生物まで、実に様々な形態があります。

 

 ちなみに私たちのヒトの体は、約60兆個の細胞が集まり、約220種類の細胞組織で構成されています。また、個々の細胞は独立あるいはほかの細胞と共同で、工場のように様々な作業が行われています。

 

 細胞はそれぞれ核をもち、核の中にはDNAが存在し、このDNAがもつ遺伝情報をもとにタンパク質などがつくられます(これを機能物質への変換といいます)。外部から食物として取り入れた物質を細胞の構成要素となるタンパク質の原料に利用したり、エネルギー生産に利用したり、その副産物を放出したりする代謝が行われています。そしてその機能を維持したまま、細胞は分裂することで増えていきます。このように細胞そのものが「生きている」のです。そのため、細胞は生命の単位ともいわれています。

 もちろん、細胞そのものを個体(細胞の集合体で1つの生命と呼べれるもの、つまりヒトなど)から分離して生かすことも可能です。そしてここに、再生医療の基本原理があるのです。


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 みなさん、テレビや新聞のニュースで、「インフルエンザ」という言葉をよく目にしたり耳にしたりしていると思います。このインフルエンザこそウイルスなのです。では、ウイルスは細菌と同じでしょうか?

 

 1892年、タバコモザイク病の病原が細菌ろ過器を通過しても感染性を失わないことをロシアのディミトリ・イワノフスキー(左)が発見し、それが細菌よりも微小で顕微鏡でも観察できない存在であることを報告しました。このろ過性の病原体が小さな細菌なのか、それともそうでないのか、議論が分かれました。しかし、1935年にアメリカのウェンデル・スタンリー(右)がタバコモザイクウイルスを結晶化することに成功し、この結晶が感染する能力をもっていることを示しました。当時の科学者は、化学物質のように結晶化することのできる生物が存在するということに、強い衝撃を受けました。ここにきてようやくウイルスは、細菌とは異なる生物であることが証明されたわけです。

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 実際にウイルスは、遺伝子とそれを保護するタンパク質の殻のみからできていて、細胞を構成するゴルジ体やミトコンドリアなどといった細胞に備わる小器官をもたないため、ウイルスそれ自体ではタンパク質やエネルギーをつくることができません。そのためウイルスは、細胞という形をもつ細菌とは大きく異なっています。

 

 また、ウイルスは遺伝子とタンパク質のみからできていて、自分でエネルギーをつくることもタンパク質をつくることもできませんが、遺伝情報を次世代に伝える仕組みだけはもっているため、非常におもしろい形、たとえるならUFOに似た形をしています。エネルギーも食料ももたない乗務員だけのUFOが、ほかの星を侵略する場面を想像してみてください。このUFOがほかの星(生物の細胞)に着陸すると中から乗務員(遺伝子)がでてきて、ほかの星(生物の細胞)の中で増えていきます。やがて増えたウイルスはふたたびUFOとなり侵略し破壊しつくした星(生物の細胞)から去ってしまいます。

 このようにウイルスは、細胞とは大きく異なる特徴があります。

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 前節でお話ししたように、DNAは、4つの塩基であるA(アデニン)、T(チミン)、C(シトニン)、G(グアニン)からできています。このうちアデニンは、様々な物質の構成成分になっており、特にATPというもっとも重要なエネルギー物質の塩基部分として、主に動物の体内で利用されています。

 

 このようにアデニンは、ほかの塩基と違った性質をもっています。では、なぜアデニンだけがほかの生体反応に利用されているのでしょか?

 

 その理由は、アデニンの化学構造としての安定性が高いためではないかと考えられています。アデニンは化学反応で簡単につくれるので、原始の地球でもありふれた物質であったと考えられます。このようなことから生命にとってアデニンは、最も利用しやすい物質であったと考えられています。

 

 また、DNAにはチミンという構成物質があります。これはウラシルという物質と非常によく似ています。しかし、DNAはウラシルを構成物質とはしませんでした。その理由は、ウラシルはDNAの構成物質であるシトシンが分解してしまうと簡単につくられてしまうからです。

 

 仮にDNAがチミンの代わりにウラシルを構成成分としていたらどうなるでしょうか?

 

 DNAの構成がウラシルの次にシトシンが並んでいる場合に、シトシンが外部からの影響でウラシルに変わったとします。そうするとウラシルとウラシルが並んだ状態となり、どちらがもとのウラシルかわからなくなります。その場合、このままの状態で親から子に遺伝子が伝わり、まったく別のものとなってしまいます。

 

 このように、DNAは遺伝という重要な役割のために構成物質を安定に保存する必要があり、そのためには、ウラシルではなくチミンを構成物質とすることが必要不可欠だったのです。

 DNAの構成物質である4つの塩基が選ばれた理由は、単純そうにみえて実は非常に奥深いのです。

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