生命の基本単位である遺伝子と容器としての細胞の記事一覧


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私たちの体はいつも同じように見えますが、実は毎日多くの細胞が死んでおり、絶えず新しい細胞をつくらなければなりません。そしてそのために細胞が行っている作業が細胞分裂です。細胞分裂とは、その名の通り「細胞が分裂する」、すなわち「1個の細胞が分かれて新しい2個の細胞になる」過程のことです。

 

 細胞分裂には、体細胞分裂減数分裂の2種類あります。皮膚、骨、内臓など体を構成する各部分の細胞を体細胞といいますが、この体細胞の分裂を体細胞分裂と呼んでいます。一方、卵巣や精巣といった生殖細胞の分裂を減数分裂えお呼んでいます。同じ細胞分裂でも目的が異なるために、異なる分裂を行います。体細胞分裂は生命としての細胞を守るために行う分裂、減数分裂は遺伝子そのものが死なない、(絶滅しない)ために行う分裂です。したがってまったく同じ細胞分裂でも、まったく様相が違ってきます。  

細胞周期におけるDNA量の変化.svg

 遺伝子をつないでいく減数分裂に関しては別の記事(究極の目標・生殖細胞の創造はなにを意味するのか?)で詳しく説明するとして、ここでは体細胞分裂について書いていきたいと思います。

 

 やい細胞分裂にはいくつかのステップ(段階)があります。そして最初の分裂から次の分裂までを細胞周期といいますが、この細胞周期を動かすために、実に様々な遺伝子が働きかけています。遺伝子が細胞を分裂する指示をだすと、46本(23対)ある染色体がそれぞれコピーされて体細胞2個分の染色体になり、細胞分裂が始まります。細胞分裂の時期は4つに分かれ、前期、中期、後期、終期と呼ばれています。

 

  • 前期:染色体が移動し、細胞が赤道面に沿って並ぶまで
  • 中期:染色体が、細胞の赤道面に沿って並んでいる期間
  • 後期:分裂した染色体が、ゆっくり両極へと移動
  • 終期:すべての染色体が極に到達。細胞質が分裂して2つの細胞になる

 このように、遺伝子の働きかけで染色体を細胞内で2つに分け、細胞を分裂せざるをえない状態にもっていきます。細胞分裂はまさに「遺伝子が仕掛けた罠」、遺伝子によってコントロールされているといっても過言ではありません。


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 多細胞生物を構成する細胞は、たとえばバラバラにしても常に集合しようとする性質があり、もとの多細胞化に戻ろうとします。これは、多細胞生物における細胞表面に接着物質や接着装置など、細胞を接着させるさまざまな仕組みが存在しているからです。この仕組みを生かして多細胞生物は、自分自身を安定な状態に保つために外部環境を遮断し、体内環境をつくりだす仕組みを取り入れています。

 

 動物では皮膚があり、これは熱や光など機械的・物理的傷害から体を守り、表皮下血管網の調整や発汗などを通して体温調節に役立っています。高等植物では表皮があり、これは植物体を機械的・物理的傷害から守とともに、水分の蒸発を防いでいます。このように多細胞生物は、生存に非常に有利な形態を取り入れています。

 

 また、多細胞生物は、環境などの影響を受け、形態の対称性を指示するようになりました。そのためヒトにかぎらず動物界を見渡すと、その外部形態はほぼ対称性が保たれています。

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 動物進化における体の対称性は、腔腸動物の段階からすでに始まっています。動物界の進化は、骨格のつくりから見て腔腸動物以後、ヒトを進化の頂点とする脊椎動物への方向と、昆虫類を進化の頂点とする無脊椎動物への方向の2つの方向に分かれます。どちらの形態においても、外部形態の対称性は維持されています。ヒトの体の場合には、鼻とへそを結ぶ部分で体をまっぷたつに分けると、目、耳、鼻孔、手、足、は左右対称になっています。しかし、上皮によって環境から遮断された体の内部器官である心臓、胃、小腸、肝臓などの臓器には、対称性はありません。この対称性・非対称性は、長い歴史を通してDNAのプログラムの中に織り込まれてきたものであると考えられています。

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 基本的に細胞の集合体、すなわち多細胞化した細胞においては、内部に位置する細胞は、外部の環境と直接的な物質やエネルギーのやり取りをもつことができません。しかし、多細胞生物と単細胞生物の中間と考えられるボルボックスは、5万個もの細胞からなる大きな球状の生物ですが、内部は空洞になっていて、細胞は表面に一層に並んでいるだけです。鞭毛運動でクルクル回ることですべての構成細胞に光と栄養を均等に供給し、すべての細胞が外部の環境と直接的な物質やエネルギーのやり取りは行う点で、単細胞生物がただたんに集まっただけのような構造をしています。しかもボルボックスは生殖細胞を分化させ、その一部の細胞だけが子孫を残します。ほかの細胞群体では構成細胞がすべて生殖細胞として機能する点で、単なる個々の細胞の集まりとは異なっています。

lab3-144163-o(ボルボックス)

 群体のもっとも進化したものといわれるカイメンは、体型はつぼ状で、中央に大きな空洞があり、上方には口が開いています。ボルボックスの違いとしては、水流運動を通して体内のすべての細胞で環境との物質交換ができるようになっていることです。さらに多細胞化が進んで体が大きくなってくると、内部の細胞に栄養や酸素を供給するためのシステムとして、水の流動性を利用したやり取りを発達させてきました。

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 群体を除き、多細胞生物のもっとも原始的な段階にあるといわれている腔腸動物のクラゲやヒドラは、この水の流動性を利用したやり取りを行っています。水生植物の場合は、すべての細胞が外界の水と直接物質交換をしていて、特別な移送系は発達していません。しかし、植物が陸上に進出するようになると、移送系の発達が見られるようになりました。

 

 たとえばシダなどの陸上植物は、水分や無機栄養を根の一部からしか取り入れることができません。そのため水分や無機栄養を吸い上げ、全身に配るための通路と、葉の光合成で生産した有機物を幹や根に下降させるための通路である維管束が必要となります。すなわち水分や栄養を吸収する根と、光合成を行う葉、その葉をできるだけ高いところにおいて光合成をしやすくするための直立した茎が発達しているのです。

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 このように、細胞はお互い役割分担(相互作用)を行うことで現在の生命になっているのです。


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 生物は多細胞化の道をたどることによって、単細胞では決して得られない有利な生命継続の手段を手に入れました。その反面、内部に位置する細胞は、外部の環境と直接的なエネルギーのやり取りをもつことができなくなり、移送のために特別な細胞が必要になりました。すなわち細胞同士の役割分担は必要不可欠になっているのです。そこで次に多細胞生物が、役割分担(細胞間相互作用)をスムーズに行うために細胞間で情報のやり取りをどのようにしているのかについて説明します。

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 動物では、化学信号としての化学伝達物質(ホルモン、サイトカイン、ケミカルメディエーター、グロースファクターなど)と、電気信号としての神経組織を発達させてきました。化学伝達物質は体内の特定の部位でつくられ、他の部位(遠方や近接)に運ばれて作用をおよぼします。化学伝達物質としては、血糖値に関係するインシュリンや血圧の上昇に関係するアドレナリンなどがあります。これらの中には別の化学伝達物質の分泌を刺激するためのものも多く、いく段階かを経て最終の生理効果を示すことから、化学伝達物質の効果は神経伝達に比べて非常にゆっくりとしか現れません。

 

 一方、神経細胞はミリ秒単位で情報が伝達できます。神経は主に3つの部分い区分けされ、細胞核のある細胞体、他の細胞からの入力を受ける樹状突起(じゅじょうとっき)、他の細胞に出力する軸索(じくさく)に分けられます。

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 前の細胞の軸索終末と後ろの細胞にある樹状突起の間の情報を伝達する部分には、微小な間隙をもつシプナスト呼ばれる化学物質による伝達構造が形成されています。神経細胞は、神経細胞同士が突起を伸ばし合ってつながり、全身に送信網がつくりあげられています。神経細胞の基本的な機能は、神経細胞へ入力刺激が入ってきた場合に、活動電位を発生させ、ほかの細胞に情報を伝達することです。活動電位とは、なんらかの刺激に応じてナトリウムイオンやカリウムイオンが細胞内外に濃度差をつくることで細胞膜に生じる、一過性の膜電位の変化をいいます。

 1つの神経細胞に複数の細胞から入力したり、活動電位が起きる限界値を変化させたりすることにより、情報の修飾が行われるのです。


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単細胞生物は、体が1個の細胞からできていて、細胞分裂がそのまま個体の増加(人間でいうなら人口増加)につながります。このことから単細胞生物は、短時間での繁殖に有利であり、ある意味においては進化速度が早いといえます、また性をもたないため、同じ個体の他と争うこともありません。

 

 このように単細胞生物は、その単純さゆえに理想的な生存方法を生み出し、その歴史は非常に長く続きました。最初の多細胞生物が誕生したのが約10億年前とされており、生物の誕生が約35億年前ですから、多細胞化には25億年近くを必要としたことになります。

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 それでは、多細胞生物のように生きるメリットはなんでしょうか? 多細胞生物は、細胞が多く集まることで体が大きくなります。このことは、環境変化に対して抵抗力を高められるだけでなく、一部の細胞が損傷を受けても増殖によって細胞を新しく入れ替えることは可能です。さらに、動物界の食物連鎖で見られるように、体が大きければ他の生物に食べられる危険は少なくなります。

 

 また、脳、肝臓、心臓など細胞が多く集まって各組織を形成することで、必要な役割を分担するようにしています。有性生殖では、生殖細胞が遺伝子を伝達する役割を持っていて、生殖細胞のみが次世代に引き継がれていきます。

 

 さらに、よりよく外部環境に適応し、効率よく生きるために体系を変えられます。たとえば、鳥は手の代わりに翼を手に入れたことで、空を自由に飛べるようになっています。

 

 すなわち、多細胞生物は環境変化に対応する能力や抵抗力が高く、細胞を専門化させ複雑な機能を獲得することにより、生存を有利にする戦略を取ってきたと考えられています。

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 このように生命の基本単位は細胞であり、植物動物を問わず基本単位がたった1つの単細胞生物、多くの細胞が協力し合う多細胞生物が存在します。そして多くの場合、多細胞生物の法が単細胞生物よりも生命の継続に有利だと考えられてきましたが、生物と無生物の境界のような構造物(ウイルスやプリオン)もあり、なかなか有利不利をいちがいに断定はできません。もしかしたら、より複雑な生命・多細胞化への進化はたんなる偶然であり、必然や理由など、なにもないのかもしれません。


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