遺伝子で決まる性質や病気の記事一覧


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遺伝子カタログとは?

 

 ここで遺伝子カタログを紹介しておきましょう。1966年に、米国のジョンズ・ホプキンズ大学のマキュージック(A.VMcKusick)教授が、そのころまでに知られているか、存在が推定されていた遺伝子のリストを出版したのです。現在では、世界標準の遺伝子データベースとなっており、インターネットに無料で公開されています。

 

 それぞれの遺伝子について、正常な機能、異常による病気の症状や検査所見、染色体上の位置などの情報、県連する論文、わかっていればDNAレベルの構造などについて、最新の情報があります。病名や遺伝子名で検索できますが、病名がわからなくても症状で検索できるので便利です。

 

 2011年8月の時点で、20369種の遺伝子が収録されています。収録された遺伝子や病気には、すべてマキュージック番号がついています。常染色体性優性の形質は1、同じく劣勢は2、伴性(別名X連鎖)は3、Y染色体上の遺伝子は4、ミトコンドリアの遺伝子は5ではじまる、それぞれ6けたの番号です。たとえば優性のハンチントン病は143100,

劣勢のフェニルケトン尿症は261600、伴性の血友病Aは306700です。

 

 なお、同じ遺伝子であっても、部分的に欠けると劣性遺伝、3塩基の反復の延長だと優性遺伝になるという現象が見つかりました。そこで最新では、新しく見つかった遺伝子は1と2を区別せず、常染色体性でまとめて6ではじまる数字になりました。

 

遺伝子カタログを覗いてみよう

 

 オンライン版ですので、調べたい言葉を入力して検索すれば、たちまち結果が出ます。検索の例を紹介しますと、高血圧で548種類、コレステロールで408、肥満は443、骨粗鬆症は229、アルツハイマーなら298、てんかんは506種類(重い奇形や知的障害に伴うものを含む)が表示されました。[cancer]で検索すると、なんと2366種類が見つかるのです。糖尿病については別記事で紹介しましたが、1型、2型のそれぞれで80種類ほどが見つかります。先天性の心奇形は126です。検索によって拾い出される項目の多さには圧倒されます。

 

意外なところに遺伝子の影が・・・

 

 日本人類遺伝学会の発表から、「遺伝子と関係があると聞いても、信じられない方がおおいだろう」という印象を受けたテーマを紹介しておきましょう。

 

 赤ちゃんの生まれたときの体重、妊娠中毒症、流産、初潮の時期、赤ちゃんの熱性けいれん、脳動脈瘤、くも膜下出血、白内障、緑内障、人前に出るとパニックを起こすパニック障害、てんかん、胃がん、肝臓がん、骨粗鬆症、精子の数、結核感染などです。最後の結核感染とは、感染への抵抗性にかかわる遺伝子があるということです。白人の数%はエイズに感染しないというように、感染への抵抗性にも遺伝子の関与があるのです。

 

 くも膜下出血については、血管壁の弾性にかかわるエラスチン遺伝子の変化が、最近になって患者で見つかりました。さまざまな遺伝子病はもちろん、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病、乳がんや大腸癌など遺伝性が知られている“がん”についての発表もたくさんあります。

 

 昔から知られていることですが、味覚、身長、知能や性格、方向感覚、絶対音感など音を聞き分ける能力、指紋などにも遺伝子が関係しています。

 食べ物の好き嫌いも、当人のわがままや親のしつけの問題が大きいにせよ、味覚にも個人差があることを頭の隅に残しておく方が良いでしょう。モモやキウイを食べると、アレルギー反応のために口の中がヒリヒリする人もいます。ありとあらゆることに、遺伝子がからんでいるのです。


遺伝子で決まる性質や病気


アレルギーとアトピー

 

 東京都の最近の調査によると、都民の20%がスギ花粉症に悩まされ、3歳児の42%がアレルギーやアトピー性の病気ということです。別の調査で、日本人の30%という数字もありました。まさに国民病です。

 

スギ花粉症は環境か?体質か?

 

 スギ花粉症に悩まされている人でも、スギのない南太平洋の島に引っ越せば、症状は消えるでしょう。では、アレルギーは環境だけの問題なのでしょうか。そうではありません。住民の20%がスギ花粉症なら、残る80%は平気ということです。花粉症になる体質の人と、そうでない人がいるのです。体質はその人の遺伝子の特徴ですから、花粉症は基本的には遺伝子の問題で、症状を引き起こす引き金にあたるのが環境(花粉)です。アレルギーは、遺伝子と環境の両方がかかわる多因子病なのです。

スギのない南の島に移住すれば、スギ花粉症の人もとりあえずは安心です。しかし、何年か暮らすうちには、熱帯植物の花粉に反応するようになるでしょう。ヨーロッパはどうでしょう。北欧ではシラカバ、バルカン地域ではシナノキが、それぞれ花粉症の主役です。引越しだけで花粉症と縁を切るのは、まったく不可能なのです。

 要するに、もともとアレルギー体質の人が、住んでいる土地に応じて、さまざまな花粉に反応しているのです。

 

免疫反応とアレルギー

 

生き物には、外から侵入する最近やウイルスなどを、殺したり無害化して体を守るための「免疫システム」があります。アレルギーは、たとえば花粉が鼻の粘膜についた時、有害なものと誤認してシステムが強い反応を起こすことで発生しているのです。

 スギの花粉は大きいので、そのままでは粘膜の内部に入れません。花粉から水溶性のタンパク質などが溶け出すと、粘膜の内部に染み込んで「抗原」として働き始めます。そこにスギ花粉に対応する抗体(免疫グロブリンE,IgE)をもつマスト細胞と呼ばれる細胞があると、活性化してヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質を放出します。

 近くの毛細血管が広がり、血管壁にすき間ができて水分が周囲に染み出すなどで、皮膚や粘膜などがふくらみ、鼻づまりにまります。神経の刺激でくしゃみがでますし、粘液の分泌により鼻水もでます。

 生まれて初めてスギ花粉に接したときには、マスト細胞にはスギ花粉に対する抗体がないので、何も起きません。侵入が何度か繰り返されると、スギ花粉に対する抗体ができて、マスト細胞にできるのです。 

 気管支に起きると、粘膜がはれ、さらに平滑筋の収縮も加わりますので、気管支が狭くなって呼吸が苦しくなります。喘息です。魚を食べて、蕁麻疹がでるのは、消化吸収された魚のタンパク質が、血流に乗って皮膚に届いたのです。魚に対する抗体をもつマスト細胞が皮膚にあると、前記の反応が起きます。なおアトピーは、アレルギーに比べて皮膚や粘膜の浅いところで反応が起きたもので、基本的にはアレルギーと同じものですが、アレルギーに比べると、わからないことが多く残っています。

アレルギー反応の仕組み

アレルギー体質はなぜ広まったか

 

 当人にとって有害無益とも思えるアレルギー体質が、なぜ進化の過程で広まったのでしょうか。アレルギー体質の人は、寄生虫に対して免疫系が激しく反応するので、寄生虫が住み着きにくいのです。食うや食わずで暮らしている原始時代の子供にとって、栄養を横取りする寄生虫は生死にかかわる問題でした。寄生虫が減れば生き残るチャンスが増えるので、アレルギー体質(の遺伝子)が広まったのです。

 マスト細胞の反応性には個人差があり、反応性が高ければさまざまなアレルギーを起こしやすいのです。アレルギーの主役である免疫グロブリンEをつくるのはBリンパ球ですが、インターロイキン4(IL-4)という物質はこれをつくりやすくし、インターロイキン12やインターフェロンγはつくりにくくすることがわかっています。つくりにくくする2種類の物質の遺伝子の働きが弱いか、IL-4の受容体が過敏だと、全般的にアレルギー反応を起こしやすいのです。

 

肥満と死の四重奏

 

 みなさんは「死の四重奏」という言葉をお聞きになったことがおありでしょうか。肥満には、糖尿病や高血圧、動脈硬化が伴いやすく、この4種がそろうと死につながるということです。肥満者では、胆石、痛風、大腸癌や男性の前立腺癌、女性の乳癌、子宮癌、卵巣癌なども増えます。免疫力の低下が風邪やインフルエンザなどへの抵抗力も落ちますし、体重の増加とともに、ひざの関節の故障も増えます。糖尿病や動脈硬化は、失明、血管障害による下股の切断、心筋梗塞、脳梗塞、腎臓の障害による透析なでにつながります。

 

体重はBMIで評価する

 

 体重はどのあたりが理想的でしょうか。判定にはBMI(body mass index)という値を使います。これは体重(kg)を身長(m)の2乗で割ったものです。BMIを計算して22あたりなら理想的です。18から25の範囲なら正常。25を越えると肥満です。ちなみにBMIが22とは、身長170cmなら体重64kg、160cnなら56kg、155cmなら53kgほどに相当します。BMIが25なら、身長170cmで72kg、160cmなら64kg、155cmなら60kgほどに相当します。

 細身の若い女性が「自分は太っている」という強迫観念にとりつかれダイエットに走るのは、逆の意味で害があります。BMIが下がると、体は「栄養不足だから、ぎりぎり生きていくのに必要なこと以外には、いっさいエネルギーを使わない」という反応を起こします。排卵が止まって不妊になり、長期的には骨がもろくなる骨粗鬆症や、血管がもろくなり脳出血のリスクがあがるなど、さまざまな問題につながります。カメのように背の曲がったおばあさんを見ますが、骨粗鬆症です。ダイエットに励む女性は、将来あのような姿になりたいのでしょうか。

 食べ物が消化・吸収されることで体に入ったエネルギーは、まず体温の維持や呼吸、循環など生存のために使われます(基礎代謝)。運動や精神活動によってもエネルギーが消費され、余ったら脂肪などの形で体内に残ります。出入りのバランスがプラスなら太るし、マイナスなら痩せます。しかし、その過程にはさまざまな遺伝子の影響があるのです。

 

肥満にかかわる遺伝子

 

 レプチン遺伝子は、肥満にかかわる遺伝子のいわば総元締めです。レプチンは脂肪組織から分泌される一種のホルモンで、その受容体は脳の視床下部にあります。レプチンの信号を受けると、視床下部は食欲中枢に満腹という情報を伝えて食欲を減らし、交感神経を興奮させてエネルギー消費を増やします。レプチンは「体には十分に脂肪があるからもう食べるな。エネルギーもどんどん使え」というメッセージなのです。

 レプチンの下流にあたる遺伝子の例としては、神経ペプチドYの遺伝子があります。これはエネルギー消費を減らし、脂肪を蓄積しますが、レプチンはこの遺伝子を抑えます。POMC(メラノコルチン前駆体、通称ポムシー)の遺伝子は食欲を減らす働きがありますが、レプチンはこれを活性化します。POMCの働きに横やりを入れて食欲を増す、アグーチ関連ペプチドの遺伝子もあります。交感神経がエネルギー消費を増やす過程には、ベータ3アドレナリン受容体の遺伝子もあります。まさに多因子遺伝です。

 レプチン遺伝子の異常があると、これらの遺伝子の働きがすべて肥満へと向かいますので、高度の肥満になります。ただしレプチン遺伝子の異常はごくめずらしいものです。多くは下流の遺伝子だけが、さまざまな組み合わせで変化しているのです。遺伝子の欠損など完全な機能の消失ではなく、働きが少し弱いなどというレベルもあります。白人では肥満の原因の2〜4%をある型のメラノコルチン受容体の異常が占めるとか。レプチン遺伝子そのものの異常(BMI=32〜50)より、レプチン受容体の異常のほうが高度な肥満になる(同65〜71)、POMCの異常では同30強など、臨床に直結したデータも増えてきました。

 POMC遺伝子など食欲の問題なら、食欲を満足させながら体に入るカロリーは少ない「こんにゃく療法」が有効です。ベータ3アドレナリン受容体遺伝子の問題なら、カロリー消費を増やす運動が有効です。減量法も、遺伝子を見て選ぶ時代が始まるっているのです。

 

肥満と生活習慣の影響

 

 米国のアリゾナ州にピマインディアンが暮らしていますが、ほとんど全員が高度の肥満で、糖尿病の頻度も何十%のレベルです。肥満につながるなんらかの遺伝子の変化を、ほとんど全員が持っているのでしょう。長年にわたり特定の地域で孤立した生活を続けてきた部族は、遺伝的に大きく偏っている可能性が強いのです。中南米の先住民は、血液型がO型ばかりということを思い出してください。

 ところで、ピマインディアンは昔から太っていたのではありません。半ば砂漠のようなアリゾナの大地で、食うや食わずで生きてきたのです。第二次大戦後に、ハンバーガーだ、ポテトチップスだ、コーラだというアメリカ式の食生活の波が押し寄せました。インディアンの居留地には仕事もあまりないため、テレビを見る時間も増えたでしょう。そこで猛烈な勢いで肥満と糖尿病が広まったのです。

 遺伝的に肥満になりやすい人でも、朝から晩まで野山を駆け回り、わずかの食べ物を分け合って食べるような生活を続ける限り、肥満にはならないのです。BMIの高いかたはがんばってください。

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生活習慣病と遺伝子

 

 しばらく前に厚生省(現厚生労働省)が、成人病を生活習慣病と呼ぶことに決めました。生活習慣に注意しましょうとアピールするためですが、遺伝子から目をそらしてしまうという問題があります。これらはすべて多因子病で、遺伝子と環境の両方が原因です。

 遺伝子が原因と聞くと治療法がないという印象を持つかたが多いと思いますが、実は遺伝子を調べることで自分のリスクを知って発病を防いだり、遺伝子に合わせて治療法を選ぶ時代が近づいているのです。

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糖尿病と遺伝子

 

 まず糖尿病ですが、患者が全国で700万人、当人が気づいていない隠れ加えるとその2倍というのです。患者といってもひとつの病気ではなく、さまざまな原因によるものがあります。まず1型、2型、その他の3群に分かれます。1型はインスリン依存型(IDDM)とも呼ばれます。糖の代謝に欠かせないインスリンの分泌が少ないもので、子供の糖尿病はこの型が多いのです。2型はインスリン非依存型(NIDDM)で、患者の9割以上を占めます。成人に多い型で、インスリンはあるのに体の反応が悪いのです。3番目の「その他」は主に単一遺伝子病で、特殊なものです。

 遺伝子カタログでIDDMを検索すると関連する遺伝子が87もでてきますが、他の病気に糖尿を伴うなど、特殊なものも含まれています。それらを除き、IDDM1からIDDM18までの18種類が代表です。免疫にかかわるHLA(ヒト白血球抗原)や、インスリンの遺伝子が特に重要です。

 インスリンも対立遺伝子の片方が完全に機能を失うと、優性遺伝型の特殊な糖尿病になります。1型にかかわるのは、インスリン遺伝子の上流側にある反復配列の反復回数の差なのです。回数が少ないとインスリン遺伝子の活性がいくぶん低く、多いと活性が高いという個人差です。高ければもちろん、少し低くても問題はありません。

 膵臓のランゲルハンス島にあるベータ細胞では、インスリンがつくられています。ところがHLAが特定の型だと、自己抗体(自己の成分に反応する抗体)ができてベータ細胞が壊れるのです。ベータ細胞がたとえば3割壊れても、インスリン活性の高い人なら問題ないでしょう。もともと活性の低い人で3割壊れると、苦しくなります。ほかのIDDMがらみの遺伝子の働きも弱いとか、不摂生が加わると発病します。典型的な多因子病のパターンです。

 2型の糖尿病については、遺伝子レベルの研究は1型ほど進んでいませんが、それでも遺伝子カタログには200以上の遺伝子が登録されています。インスリンの効きが悪いのは、遺伝子のほかに、肥満や運動不足など生活習慣の問題もあります。膵臓の効きの悪さをカバーするために、大量のインスリンを作りますが、何年かのうちには疲れ果ててダウンします。したがって、2型でも末期には、インスリンの不足が起こるのです。2型もほとんどが多因子病です。

 なお、糖尿病は、失明や下股の切断、腎臓の機能損失など重大な合併症につながります。成人の失明も、腎臓障害による人工透析も、いちばん多い原因は糖尿病です。このような合併症は、必要な治療を受け、食生活に注意するなどして血糖値を低く保てば、避けることができます。

 あらかじめ自分は糖尿病のハイリスクと知って、生活習慣に注意することで発病を避けるのがベストの対応でしょう。

糖尿病

高血圧と遺伝子

 

 高血圧がらみの遺伝子は、遺伝子カタログになんと565種類もでています。最高血圧が160mmHg、あるいは最低血圧が95(以下、160/95と表記)を越えると高血圧という従来の基準では、患者が全国で1600万人とされていました。日本高血圧学会が2000年に提案した140/90を基準にすると、3700万人が当てはまるのです。国民の1/3が患者という基準はおかしい、という批判もあるそうです。

 それはともかく、血圧にかかわる遺伝子の一つであるアンギオテンシノーゲン遺伝子にはDNA多型があり、遺伝子産物の235番目のアミノ酸がトレオニン(T)だとし塩分に強く反応し、メチオニン(M)だと反応しないというのです。遺伝子型がTTやMTの人は、塩で血圧が上がりやすいのですが、逆に塩を減らせばすぐ血圧が下がります。MMの人は、塩を減らしても血圧は下がらないので、はじめから薬を使います。

 

がんの原因は遺伝子か?環境か?

 

 タバコを吸う人は肺癌のリスクが高く、広島、長崎の被爆者やチェルノブイリ事故の汚染地域の住人からは、甲状腺癌などさまざまな“がん”が発生しました。大気のオゾン層の破壊で地表に届く紫外線が増えると、皮膚癌も増えます。“がん”はほとんど環境の影響で起こるような感じですが、どうでしょうか。

 ちなみに皮膚のほか、食道、胃や腸など中空の器官の内面は、外胚葉性の上皮細胞で覆われています。上皮細胞にできた悪性の腫瘍性の病変が、がんです。中胚葉性の筋肉などにできるのが肉腫、血液や骨髄の白血球が悪性化したのが白血病、リンパ腺などのリンパ球が悪性化したのがリンパ腫です。これらをまとめて、悪性新生物あるいは“がん”と呼びます。

 

胃癌の家系と遺伝子

 

 ナポレオンは本人を含めて身内に胃癌の患者がたくさんいました。細胞同士の接着にかかわるカドヘリンの遺伝子が変化すると、家族性に胃癌が起こることがわかっています。ナポレオンの家系にこの遺伝子の変化があったか否か、遺体がわずかでも残っていれば調べることができますが、どうでしょうか。乳癌や大腸癌が多い家系もあります。家族性腫瘍です。

 身内にこれませ“がん”が見つかったことはなく、遺伝性が考えられない場合でも、調べてみると“がん”の細胞には遺伝子の変化が起きています。たとえば皮膚の細胞の1個に遺伝子の変化が起きて、その細胞が増えると皮膚癌になるので、がん細胞にはすべて遺伝子の変化がおきています。がんが大きくなり、性質が悪性になるにつれて、ほかの遺伝子の変化が加わります。

 ただし、体内のほかの細胞には変化がないので、当人がつくる精子や卵子はまったく正常です。当然ながら子供に伝わることはありません。遺伝子の変化はあるにせよ、遺伝病ではないので、「遺伝子病」と呼びます。

 

「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」

 

 “がん”にかかわる遺伝子には、「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」があります。前者が変化すると細胞は“がん”に向かって進みます。いわば発がんに向けて、車のアクセルのような働きをする遺伝子のグループです。たとえば、がん遺伝子が突然変異を起こすと細胞の増殖を加速します。RAS遺伝子の突然変異が有名です。

 がん遺伝子が、活発に働いている遺伝子の隣に移動する(相互転座:2本の染色体が互いに一部分を交換する)ことで、活性が高くなることもあります。相互転座した2本の染色体それぞれの切り口の近くに、片方にはがん遺伝子、他方には活発な遺伝子があるわけです。がん遺伝子そのもののコピーが増えることもあります。

相互転座

 がん抑制遺伝子は、細胞が勝手に分裂・増殖しないように抑える遺伝子で、いわばブレーキ役です。がん抑制遺伝子が機能を失うことも“がん”につながります。

 遺伝性の“がん”は、どのようなメカニズムでできるのでしょうか。一つはDNAの傷の修復にかかわる遺伝子の異常です。細胞分裂に際しては、1本のDNA(二本鎖)が複製により2本に増え、それが2つの細胞に分かれます。このとき、複製の誤りによって傷ができます。紫外線や放射線などの環境変異原によって、DNAに傷ができることもあります。

 細胞にはそのような傷を修復するメカニズムもあります。修復にかかわる遺伝子に異常がると、体内のあちこちの細胞にさまざまな遺伝子の傷がたまります。たまたま、がん遺伝子やがん抑制遺伝子に傷ができた細胞から“がん”ができるのです。修復異常は劣性遺伝の形式で家系を伝わりますので、結果的に“がん”も同じ形式で伝わります。赤外線によってDNAにできた傷の修復ができない色素性乾皮症(数種類ある)が例です。

紫外線によるDNAの傷

家族性のがんー網膜芽細胞腫

 

 はんかしたがん抑制遺伝子やがん遺伝子が家系内を伝わっていても、遺伝性の“がん”になります。赤ちゃんの目にでいる網膜芽細胞腫(以下、網膜芽腫)の家族の例では、がん抑制遺伝子RB1の対立遺伝子の片方が機能を失っています。正常な対立遺伝子を+、機能を失った対立遺伝子を−とすると、正常な人は+/+です。患者は体内のすべての細胞が+/−です。患者から精子や卵子を通じて子に伝わるのは、+か−で半々です。+を受け取れば+/+で正常、−なら+/−で患者になります。つまりこの2人に1人が患者になる優性遺伝です。

 DNA複製に際しては、一定の割合で塩基の取り込みの誤りが起きます。患者の体内のすべての細胞が+/−であると、一定の確率で−/−に変化した細胞ができるのです。もちろん、遺伝子あたりで10万分の1といった低い確率ですが、赤ちゃんの網膜をつくる網膜芽細胞は200万個ほどありますので、−/−の細胞が10個や20個できても不思議はありません。−/−の細胞のそれぞれから網芽腫が発生しますので、遺伝性の網芽腫は両目にたくさんみつかるのです。遺伝性の+/−の人でも、片目だけに10個もあつまることがありますが、ごくごくめずらしいことです。

 正常な赤ちゃんは、体内の細胞がすべて+/+ですから、+/−の細胞がたとえ10個できても、網芽腫にはなりません。同じ細胞の対立遺伝子の両方が変化して−/−になると、その細胞から網芽腫が発生します。ただし、めったに起きることではないので、発生頻度は何万人に1人などと低いのです。ましてや、両目にできることはありえません。

 

そのほかの家族性のがん

 

 がん抑制遺伝子としてはAPC遺伝子もあります。APCの変化によって、まず大腸の多数の小さなポリープ(良性の腺腫)ができ、ポリープの細胞にほかの遺伝子の変化が加わるとがんに進むのです。結果的に家族性の大腸癌ということになります。この場合、APCの変化だけでは−/−でもポリープ止まりで、がんができるためにはほかの遺伝子の変化が加わる必要があるので、多因子遺伝です。

 がん抑制遺伝子の一つp53の変化では、ほとんどあらゆる種類の“がん”が家族性に起きるリー・フラウメニ症候群になります。RB1は主に網膜芽細胞の分化の段階で、APCは大腸の上皮細胞で、それぞれ重要な役割を果たしている遺伝子です。p53は、さまざまな種類の細胞で活動しているので、多彩な“がん”になるでしょう。

 なお、がん遺伝子の変化による家族性の“がん”もあります。RET遺伝子の変化が例で、甲状腺などさまざまな内分泌腺に“がん”を起こすのです(多内分泌腺腫瘍2型)。また、この遺伝子の異常によって、ヒルシュスプルング病という先天性の巨大結腸症も起きます。細胞や組織の分化にかかわる遺伝子の変化が“がん”につながるのは、ありえない話ではないのです。なお、前記のRB1は細胞周期の調節などにかかわっています。

遺伝性腫瘍 

 


遺伝子で決まる性質や病気


多因子遺伝とは?

 

 ここまでは、1つの遺伝子の変化があれば病気、なければ健康という、すっきりした遺伝でした。対立遺伝子は1個(優性や伴性)か、2個(劣性)がかかわっています。ところで5種類とか10種類(対立遺伝子は10とか20)など、複数の遺伝子がかかわる病気や性質があるのです。というより、1の形質のほとんどは、このようなものなのです。これが多因子遺伝子ですが、環境の影響もありますので、多因子病と呼ぶこともあります。

 

 1つの遺伝子でも病気と健康がわかれるような対立遺伝子の変化は、100%の機能をもつ(正常)か、0%(数%などもありうる)かという、クリアーカットなものです。多因子病にかかわる遺伝子の変化は、それぞれの対立遺伝子の働きが10%低い、20%低い、あるいは逆に10%高いといった、個人差レベルの違いなのです。

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 ある対立遺伝子の働きが10%低くても、発病はしません。ただし同じ多因子病にかかわる5種類の遺伝子について、たまたま働きが悪い対立遺伝子を4個、5個ともっていると、ぎりぎり持ちこたえている状況になります。そこに不摂生が重なると、限度を超えて発病するほかないでしょう。その限度にあたるのが閾値です。

 

 糖尿病、高血圧、肥満などの生活習慣病、アレルギー、多くの“がん”が多因子病であることから、注目されているメカニズムです。いずれも数百万人、千万人レベルの患者がいますので、問題が大きいのです。また、身長や知能など正常な形質の多くも、多因子遺伝です。

 

双子でわかる遺伝子のつながり

 

 単一遺伝子病(形質)では、祖父から父へさらに子へなどと、対立遺伝子をたどることは、難しくありません。多因子遺伝のように、それぞれの対立遺伝子の影響が小さいと、対立遺伝子の働きや伝わり方を見分けることは、難しくなります。そのような場合に、遺伝子がからんでいるか否かを見極めるためには、双子を調べるのです。

 

双子には2種類ある

 

 双子には、一卵性と二卵性があります。一卵性は1つの受精卵が発生の途中で偶然に2個に分かれたものです。当然ながら性も同じで、揃って男かそろって女かのどちらかです。

2種類の双子

 二卵性の双子は、同時に排卵された2個の卵子が、それぞれ別の精子によって受精したので、同時におなかの中にいますが、遺伝的には普通の兄弟や姉妹と同じで、すべての遺伝子の平均で50%の共通性があります。半数が男女の組で、男男と、女女の組が1/4ずつです。

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 図で両親はA、B、C、Dという4種の対立をもつと仮定します。図の右側で、双子のうち1人がACとします。他方はAC、AD、BC、BDのいずれかで、確率は1/4ずつです。ACなら2人は完全に一致、ADかBCなら50%の一致、BDなら0%の一致ですので、平均すると50%です。ほかの遺伝子でも同じことで、すべての遺伝子の平均でも50%の一致になります。

 

双子を比較すると遺伝子の影響がわかる

 

 双子の組を集めて形質や病気の有無を比較すると、遺伝子の影響がわかります。一卵性で二卵性より一致率が高ければ、遺伝の影響があり、差がなければ遺伝の影響はないのです。双子は一緒に胎内で過ごし、生まれてからもいっしょに育つので、時代の違いなど環境の影響、いわば雑音に悩まされずに遺伝の影響を知ることができます。

 

 一卵性で別々の育った組を調べることができれば、環境の影響の有無や程度がわかります。遺伝的にはまったく同じですから、少しでも違いがあれば環境の影響です。

 

 一致率の例を紹介しておきましょう。。一卵性と二卵性の間に大きな差があれば、一見して遺伝の影響が強いとわかりますし、差が小さければ遺伝の影響が小さいとわかります。意外なところに遺伝子の影響があると、驚かれた方も多いのではないでしょうか。

 

 具体的にどれだけ遺伝の影響があるのかを知るためには、遺伝率を計算します。一卵性と二卵性の組を集めて、それぞれの種類の双子について、たとえば身長の分散を計算し(標準偏差の計算に使う分散です)。得られた値(二卵性の分散はDZ、一卵性の分散はMZ)から(DZ-MZ)/DZを計算すれば、身長の遺伝率が得られます。

 

 一卵性の組の間にまったくの差がなければ、遺伝率は1です。その形質は遺伝だけで決まるのです。一卵性と二卵性の間にまったく差がなければ遺伝率はゼロです。


遺伝子で決まる性質や病気


劣性遺伝と優性遺伝

 

 遺伝子は父と母から受け継いだものが対になっています。それぞれが対立遺伝子です。対の両方が揃った場合にかぎって表に出るのが劣性遺伝です。ABO式血液型でいえばO型です。

 

 他方、AやBの対立遺伝子は必ず表に出ますので、常染色体声優性遺伝(以下、優性遺伝)です。劣性の形質は、別に性質が劣っているという意味ではなく、対の片方だけでは表に出ないという意味です。酵素の遺伝子の異常は、ほとんど劣性遺伝になります。メカニズムをみましょう。

 

劣性遺伝のメカニズム

 

 ある酵素の遺伝子について、正常な対立遺伝子をA、半分ほど欠けて酵素をつくれなくなった対立遺伝子をaとしましょう(血液型とは関係のない記号です)。A対立遺伝子を揃ってもつAAの人は、当然ながらまったくの正常です。aaの人は酵素をつくれないので、その酵素が分解すべき物質(気質)が体内にたまるか、または気質に酵素が働いてできる産物が不足するか、いずれかの理由で病気になります。

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 Aaの人はどうでしょうか。それぞれの体内の中で、A対立遺伝子は酵素をつくりますがaはつくれませんので、正常な人の半分の酵素ができます。人の体にはゆとりがありますので、酵素の量が半分あれば日常の生活にまったく問題はなく、病気になりません。このように正常な対立遺伝子を隠している人を、保因者と呼びます。

 

 なお、AAやaaのように、同じ対立遺伝子が揃っている人をホモ接合体(以下ホモ)、Aaなど違う大尉率遺伝子を持つ人をヘテロ接合体(以下ヘテロ)と呼びます。つまり、ヘテロが保因者になるのが劣性遺伝です。

 

 ちなみにABO式血液型の遺伝子は、9番染色体に乗っています。この遺伝子は血液型を決める大きな分子に、小さな化合物を付け加える酵素の遺伝子なのです。A遺伝子とB遺伝子がつくる酵素は、付け加える化合物がわずかに違います。O遺伝子では酵素機能を失っているため、なにも付け加えられないのです。

 

優性遺伝のメカニズム

 

 優性遺伝のメカニズムが、いくつか知られています。一つは異常な対立遺伝子の産物の影響が強く、正常な産物を圧倒してしまう状況です。ハンチントン病の遺伝子には、CAGという3つの塩基が繰り返した部分があります。ハンチントン病の患者では、この繰り返しが大きく延長しています。

 

 CAGはグルタミンというアミノ酸の情報なので、患者の遺伝子産物ではグルタミン・グルタミン・グルタミンという繰り返しが大きく延長しています。するとその遺伝子が活動している神経細胞は、アポトーシス(細胞の自殺)を起こして死んでしまいます。正常な対立遺伝子の産物があっても、細胞自体が死んでしまうのでは主部になりません。

 

 もう一つのメカニズムは、遺伝子産物がそのままでは機能をもたず、いくつか集まることで機能があわられる場合です。つまり、産物はサブユニットにすぎないのです。正常な産物をn、異常な産物をNとしましょう。優性遺伝では、表に出る対立遺伝子を大文字で書く習慣です。

 

 Nとnはそれぞれの細胞の中で同じ量だけつくられます。nがそのまま働くことができれば劣性になるのですが、Nもnもあくまでサブユニットで、そのままでは働けません。これらが2つ集まって機能のある最終産物ができるとしましょう。NN、Nm、nnは、順列組み合わせで1:2:1の割合になります。

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 nnは正常、NNは異常な最終産物で機能はありません。問題はNnです。2つのサブユニットがひものようにより合わされて、ロープができると考えてみましょう。Nは異常なのでしなやかに曲がることができず、Nが1本でも混じると、正しい構造のロープができないのです。つまりNNもNnも働かず、まともなのはnnだけですから、1/4しかありません。これではさすがに不足して、発病するのです。つまり、ヘテロが保因者にならず発病するのが優性遺伝です。

 

 プロコラーゲン線維のロープにカルシウムが沈着して骨ができますが、骨形成不全症の中には、このようなメカニズムによる優性遺伝の病型があります。またサブユニットが3本集まって最終産物をつくる場合もあります。そうなると、正常なnnnは、全体の1/8しかありませんので、発病は間違いありません。対立遺伝子は、異常なNをつくるくらいなら、なにもつくらないでいてくれるほうが、悪影響が少ないのです。

 

伴性遺伝とは?

 

 血友病やいわゆる赤緑色盲(色覚異常)の患者は、男性ばかりです。女性の患者は、ごくごく珍しいのです。これらは、病気の原因となる遺伝子が、X染色体に乗っている伴性遺伝です。

 

 性染色体は女性ではXが2本、男性ではXとYが1本ずつです。X染色体上に1/1000の割合で見つかる対立遺伝子の異常なら、Xが1本だけの男性は1000人に1人が患者です。他方、女性の2本のXがそろって異常になる閣率は、その2乗なので100万分の1です。男性に1万に1人の病気なら、女性では1億に1人です。女性の患者を見かけないのも当然でしょう。

 

 ところで女性の2本のXのうち、1本だけが異常の場合には、患者ではなく保因者になります。保因者の女性から男の子が生まれる条件を考えましょう。X染色体上の正常な対立遺伝子Hと、異常な対立遺伝子hのいずれが子に伝わるかは50%の確率ですから、平均して男児の半数はhを受け取って患者、半数はHで正常になります。女児はHを受け取ればまったく正常、hなら保因者になりますが、やはり50%ずつの確率です。

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 男性が患者の場合には、1本しかないXがhを乗せていますから、Xを受け取る女児はすべて保因者、Yを受け取る男児はまったく正常になります。したがって、父から息子に伴性遺伝の形質が伝わることはなく、もし伝わればそれだけでXとは無関係と判定できます。

 

伴性遺伝のメカニズム

 

ここまで書くと、「伴性遺伝と同じだ」という声が聞こえてきそうです。実はちょっと違うのです。女性のXのうち1本は、胎生の十数日に不活性化します。「それなら、Xが1本の男性と同じではないか?」というのは、もっともな疑問です。女性のどちらのXが不活性化するかは、その時点で細胞ごとにランダムに決まります。HHやhhの組み合わせなら、どちらが不活性化しても同じですが、Hhはどうでしょう。

 

 2本のうちHを乗せたXが不活性化した細胞を見てみましょう。正常なHが不活性化しますので、その細胞の遺伝子産物の活性はゼロです。一方、hを乗せたXが不活性化すると、Hを1本含む正常な男性の細胞と同じで、100%の活性になります。つまり、活性が0%と100%の細胞が同じ数だけできます。平均すると50%ですから、発病を免れて保因者になるのです。

 

ミトコンドリアが決める母系遺伝

 

 母系遺伝というと、伴性遺伝とまぎらわしい感じですが、まったく別ものです。核の中にある染色体ではなく、細胞質に散らばっているミトコンドリアの問題です。ミトコンドリアには小さな環状のDNA(16000塩基対ほど)が含まれていて、エネルギー代謝などにかかわる遺伝子がいくつか働いています。

ミトコンドリア

 太古の時代、地球の大気には酸素がありませんでした。原始的な生命は、海底から噴き出す硫化物などをエネルギー源としていたのです。28億年前ほど前にラン色細菌(シアノバクテリア)が突然変異を起こし、太陽光をエネルギー源に使えるようになりました。太陽の光は無尽蔵なのでシアノバクテリアが大発生して酸素をつくり、それまで嫌気的だった大気が、大量の酵素を含む現在の姿になったのです。

 

 酸素は当時の生物にはきわめて有害で、そのため絶滅した生物もかなりありました。真核生物(細胞中に核をもつ生物)のごく一部は、酸素を利用してエネルギーのつくることのできる細菌を細胞内に取り込んで、共生関係をつくることで乗り切ったのです。ミトコンドリアは、共生した細菌の子孫です。ミトコンドリアの遺伝子は、核の遺伝子とは異なる遺伝記号を一部に使うなど、ユニークなところがありますが、起源を考えれば、当然でしょう。40億年の生命の歴史音うちで、20億年ほど前の話です。

母系遺伝

 細胞質は卵子のものがそのまま子に伝わるので、ミトコンドリアは母から子へ伝わります。生死のミトコンドリアは尾の根元に並んでいて、運動のエネルギーを供給していますが、受精に際しては頭部だけが卵に入りますので、子には伝わりません。母からは、男女を問わず、すべての子に伝わります。したがって祖母、母、娘と女性でつながっていれば、何世代でもそのまま受け継がれますが、間に息子が入ると、孫には息子のお嫁さんのミトコンドリアが伝わることになります。

 

 母系遺伝で伝わる病気としては、ある種の糖尿病や、網膜の変化で失明するレーベル視神系委縮症などがあります。


遺伝子で決まる性質や病気