2017年8月の記事一覧


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2種類の核酸が生命活動を司る

 

 赤ちゃんを育むために作られた偉大なる知恵の宝庫・母乳。この最高傑作は、もとを正せばお母さんの遺伝子(DNA)、すなわち核酸に描かれた設計図に基づいて作られています。

 

 地球上に暮らすすべての生物にとって、生まれてから死ぬまでのあらゆる生命活動は遺伝子に書き込まれた情報によって決められています。その遺伝情報を支配し、生体を維持している物質が核酸なのです。

 

 では、その核酸とは一体どんな特徴を持つ物質なのでしょうか。ちょっと難しい話になりますが、まずは核酸を正確に理解するところから。

 

 私たちの人間の体は、約60兆個の細胞から成り立っています。生命の最小単位である一つ一つの細胞は、組織や臓器の働きを維持するために休むことなく活動し続け、平均200日のサイクルで新しいものに生まれ変わっています。細胞が生まれ変わるとき、一つの細胞が細胞分裂によって二つに分かれます。

 

 この細胞分裂が新陳代謝の基本となるわけですが、その際、中心となる細胞核の中のDNAはコピーされて二つになります。核酸には、デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)という2種類が存在します。核の内外に存在する酸性物質として発見されたことから「核酸」と名付けられました。

 

 では、それぞれの役割について見ていきましょう。

 

 人体の大部分は、タンパク質でできています。タンパク質とは何種類ものアミノ酸がいくつ結合してできた物質のことで、あらゆる組織や臓器を形作る部品として、さらに体内のさまざまな化学反応を司る酵素として利用されています。人間の場合、生体を構成するタンパク質は20種類のアミノ酸から成り立っており、その数や種類、つながる順番によってタンパク質の種類が決まります。

 

 実はこうしたタンパク質を作るための複雑な情報は、DNAの中に記されているのです。そして、1本のDNAには複数の遺伝子が乗っていて、その一つ一つには個体差を決めるあらゆる遺伝情報が格納されています。

 

 つまり、「DNA=全遺伝情報が記された生物の設計図」「遺伝子=DNAの一部分で、ある特定のタンパク質を作るための設計図」といえるでしょう。

 

 DNAは塩基・糖(デオキシリボース)・リン酸という化合物が1つずつ結合したものが基本構成単位(この最小単位をヌクレオチドと呼ぶ)となっています。このうち塩基はアデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)の4種類に分かれており、これらが遺伝情報のすべてを記録する部品です。

 

 DNAは、ヌクレオチドが次々と鎖のようにつながることで形作られた大きな分子(鎖状高分子と呼ばれる)で、はしごを螺旋状にねじったような、二重螺旋構造になっています。そして、糖とリン酸はこの螺旋状の外側に、塩基は内側にあり、2本の鎖は塩基の結合によって結ばれています。

 

 この結合には独特の規則があって、アデニンはチミンとのみ、グアニンはシトシンとのみ結合します。つまり、決まった相手と必ずペアとなって存在しているわけです。これを「塩基対」といい、アメーバなどの単細胞生物から人類に至るまで、すべての生物に共通しています。

 

 このように、すべての遺伝情報はA・T・G・Cといった4種類の塩基によって作られているわけですが、A・T・G・Cはデタラメに並んでいるわけではありません。生物の種類により、また同じ種類でも個体によって並び方は異なります。人間でいえば、この並び方の違いが顔立ちや身体の特徴、体質、正確など、個性を決定づけています。

 

 ちなみに、人間のDNAは約30億のヌクレオチド(A・T・G・C)で構成され、約3億の情報を担っています。一人一人の遺伝子の違い(ヌクレオチドの配列の違い)は約1000個に1個、0.1%です。そして人間とチンパンジーの違いは1.23%です。

 

 一方、もう一つの核酸・RNAにはどのような機能が備わっているのでしょうか。

 

 DNAには、タンパク質の設計図である遺伝子でが格納されていますが、この設計図は直接にタンパク質の合成に使われているわけではありません。

 

 遺伝子の情報は一旦RNAにコピーされ、その情報に基づいてタンパク質の合成が行われます。つまりRNAは、DNAの鎖に並んでいる塩基から必要な部分だけを読み取り、タンパク質の材料となるアミノ酸を集めてきてつなぎ合わせるという実際の作業を行っているのです。まさにこの2つは、設計図と大工さんの関係に例えられます。

 

 そしてRNAは、①アミノ酸を集める、②アミノ酸をつなぎ、タンパク質を合成する、③その合成の工場として機能する、という3つの役割を担っています。

 

 ちなみにDNAとRNAの構造上の違いは、糖の種類(リボース)、塩基の種類(チミンの代わりにウラシルをもつ)、鎖状(1本)が異なります。


核酸


核酸を合成する2種類の方法

 

 さて、核酸は体内でどのように作られているのでしょうか。合成方法には、次の2通りがあります。

 

 1つは、「デノボ合成」と呼ばれる方法。これは、一般の食品に含まれているアミノ酸やアンモニア、炭酸ガスなどの簡単な化合物を原料とし、肝臓や腎臓の一部で合成するというものです。

 

 もう1つは、塩や精製した糖を除き、すべての食品に含まれる核酸やその分解物(ヌクレオチド・ヌクレオシド)を利用して各細胞で行っている「サルベージ合成」です。

 

 生体では常に一定量の核酸が保存される仕組みになっているため、食事から補給する核酸(サルベージ合成)が多ければ肝臓で作られる核酸(デノボ合成)の量が減り、逆に補給の量が少なければ肝臓で合成する必要が生じてきます。肝臓や腎臓で二次的に合成するのであれば、わざわざ食品から摂り入れる必要はないように思えますが、それは全くの誤解で、この2つの合成方法には大きな違いがあります。

 

 食品から摂取した核酸は、消化管内で膵臓から分泌される分解酵素(ヌクレアーゼ)によってヌクレオチド(リン酸・糖・塩基)に、さらに、ホスファターゼという分解酵素によってヌクレオシド(糖・塩基)に分解され、そのヌクレオチドとヌクレオシドが素早く体内に吸収されます。その吸収率は約70〜90%と、非常に高率であることがわかっています。そして、赤血球によって血管内を移動し、全身の約60兆個に及ぶ細胞にプールされます。

 

 この流れで核酸を利用することをサルベージ合成を呼んでいます。食事由来の核酸は、摂取してから最小単位のヌクレオチドおよびヌクレオシドの形に分解・吸収され、生体活動に生体活動に利用されるまでのプロセスが速やかに行われるのが特徴です。

 

 これに対して、腎臓によるデノボ合成の核酸は、アミノ酸などからヌクレオチドおよびヌクレオシドが合成されるまでに10段階以上のプロセスを要します。結果的に、食品から核酸を摂取した場合に比べ、より多くのエネルギーを費やしてしまうことになるのです。

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 したがって、食品からの核酸摂取量が十分に満たされていれば効率良く利用することができます。「食べ物から核酸を摂取するということは、生き物の遺伝子を食べること。ほかの動植物の遺伝子を食べて大丈夫なのか?」と疑問に思う方もいると思うが、「牛の遺伝子を食べて牛になる」といった心配をする必要は皆無です。

 

 地球上の生き物は、すべてA・T・G・Cの4つの塩基が遺伝子を構成しており、その配列に遺伝子情報があるわけですが、消化によりA・T・G・Cがバラバラになると、そこには遺伝情報がなくなるため、そういった心配がないのです。口にするまで高分子だった核酸も、酵素による分解を重ねていくうちに、なんの情報ももたない低分子の状態に変化していきます。したがって、牛や豚の核酸を食べたからといって牛や豚の体つきになることは決してありません。

 

 核酸の必要摂取量は、年齢や健康状態によって違いますが、目安としては体重50kgの成人の場合で約2gと言われています。

 

 栄養価が高いことで知られる卵や牛乳には、残念ながら核酸がほとんど含まれていません。食品の中でずば抜けて核酸を多く含むのは、サケの白子(精巣)などの魚の白子、ビール酵母などの酵母、ちりめんじゃこ、カツオ節、ハマグリ、ノリ、大豆、レバーなどです。

 

 しかし、含有量の多いサケの白子(DNAが多い)や酵母(RNAが多い)は、日常の生活にはあまりなじみのない食品であり、これらの食品を毎日そのままの状態で必要な分だけ摂取するのは困難です。また、それ以外の一般的な食品にしても、毎日摂るとなるとついめんどくさいが先立ってしまい、取りしまいがちになることもあるでしょう。

 

 そこで、核酸原料を用いた市販の健康食品やサプリメントを日常的に利用することをオススメします。「サケの白子エキス」が含有されたサプリメントなどの製品は、脂質が省かれているため、コレステロールの心配もなく、長期保存しても変質しにくいです。しかも、1日に必要な摂取量を簡単かつ効率良く摂ることができるのが最大の利点です。


核酸


発育に不可欠な核酸

 

 母乳には赤ちゃんに必要なすべての栄養素が、人間特有の発育過程に適合した状態で入っている。

 

 しかし、母乳に含まれている栄養素や免疫物質は、仮に人間の体を家に例えるなら、鉄骨やコンクリート、セメントなどの材料やそれらを組み立てるために使う道具に相当するものです。せっかくいい材料や道具が揃っていても、それらを正確に組み立てるための設計図がなければ、家は完成することはありません。また、その設計図を読み取って、実際に作業をしてくれる大工さんも当然必要になってきます。

 

 私たちが生まれてから死ぬまでの生命活動のあらゆる情報が書き込まれている設計図の役割を果たしているのがDNA(デオキシリボ核酸)、さらにその情報を読み取ってアミノ酸を集め、体を作るためのタンパク質を合成する大工さんの役割を果たしているのがRNA(リボ核酸)です。核酸とはこの二つの物質のことを指し、生命の最小単位である細胞の中に存在しています。

 

 核酸は、「有機塩素ー糖ーリン酸」という3つおん化合物の複合体が鎖状に結合したものです。そして、この最小単位のことを「ヌクレオチド」(核酸が消化酵素によって分解されてできる物質)と呼んでいます。

 

 2種類ある核酸のうち、デオキシリボースという糖を含む核酸をDNA(デオキシリボ核酸)、リボースという糖を含む核酸をRNA(リボ核酸)と呼んで区別していますが、両者には他にも塩基の種類で一部違いがあります。

 

 母乳にはこの核酸やヌクレオチドが十分に含まれています。核酸の構造、そしてこれらの核酸にどのようなタンパク質の設計図が組み込まれ、遺伝情報がどのように写し取られていくのか、その詳しいメカニズムについてはまたの機会に。

 

母乳で育った赤ちゃんはアレルギーになりにくい

 

 日本では、1995年以降に発売された粉ミルクの一部に核酸成分が配合されています。核酸は人間以外の哺乳動物の母乳にはほとんど含まれていないので、従来の粉ミルクを飲んで育った赤ちゃんは核酸が摂れていなかったわけです。

 

 核酸入り粉ミルクが世界的に普及し始めたのは、その4年ほど前、1991年のこと。当時の欧州共同体(現EU)が「粉ミルクへの核酸の配合量」についての指針を打ち出したのをきっかけに、アメリカ、韓国、日本をはじめとした世界核国がそれに追随するかたちで「核酸関連物質」「ヌクレオチド」の配合をうたった粉ミルクの製造・販売を展開してきました。

 

核酸入り粉ミルクの歴史

 

 事の発端はEC通達が発表される前まで遡ります。

 

 20世紀初頭から人工乳の研究開発に着手してきた「粉ミルク先進国」アメリカでは、1970年代後半から乳幼児の間で、アトピー性の皮膚炎や喘息、花粉症といったアレルギー疾患が蔓延し、国を挙げての対策が急がれていました。そこで各専門機関が研究チームを作り、乳幼児の栄養状況について分析したところ、粉ミルクで育てた赤ちゃんは母乳で育てた赤ちゃんに比べてアレルギー疾患を発症する割合が大幅に高いことが明らかになりました。

 

 さらにその原因を解明するために、アレルギーの発症に関与しているIgE抗体の血中濃度を調べた結果、粉ミルクで育てた赤ちゃんのIgE抗体の量は母乳で育てた赤ちゃんよりも明らかに大いこともわかりました。

 

 このIgE抗体は本来、外から侵入してきた異物に対抗する役割を持ち、B細胞と呼ばれるリンパ球の仲間であるヘルパーT細胞で、作用の違いによって1型(Th1細胞)と2型(Th2細胞)に分けられます。

 

 このTh1とTh2は、互いに作用し合って免疫機能そのものやアレルギー反応を調整していますが、なんらかの原因で双方のバランスが崩れ、どちらかに傾くと、免疫反応に異常が現れます。現代人に多発するアトピーや喘息、花粉症などのアレルギー疾患(これらを1型アレルギーと呼ぶ)は、この2つのバランスがTh2に傾き、IgE抗体が過剰に生産された結果、発症する事がわかっています。

 

 多くの専門家たちがさまざまな研究を重ねた結果、母乳で育った赤ちゃんと粉ミルクで育った赤ちゃんとの間にこれほどの違いが見られるのは、核酸の優夢が影響しているのではないかと考えられるようになりました。実際に某大手乳業メーカーや遺伝子栄養学研究所の行った動物実験でも、母乳並みに核酸を転化した粉ミルクで飼育したマウスは、無添加の粉ミルクで飼育したマウスに比べ、血液中のIgE濃度が著しく低下することが確認されています。

 

核酸入り粉ミルクの登場

 

 ここまで述べてきたように、国内外の乳業メーカーは母乳に限りなく近い粉ミルクを提供するために、1世紀(国内では半世紀)もの長きにわたって母乳研究を続けてきました。

 

 その過程で、配合する三大栄養素(タンパク質、糖質、脂質)の組成や比率を変えたり、各種ビタミンやミネラルを強化したり、ごく最近では脳の発育に役立つと言われているDHA(ドコサヘキサエン酸=不飽和脂肪酸の一種)や免疫機能を強化するγ-リノレン酸を配合するなど、さまざまな開発努力が繰り返し行われています。

 

 しかし、常に大きな壁として立ちはだかっていたのが、アレルギー疾患や下痢の症状が起こりやすいという現実。粉ミルクの普及とアレルギー疾患の因果関係についてはあらゆる角度から研究が進められてきましたが、どうやって改良すればアレルギー疾患の増加に歯止めをかけることができるのか、決定的な手段はずっと謎に包まれていました。

 

 そうしたなかでにわかに脚光をあびるようになったのが、核酸の存在でした。母乳で育った赤ちゃんは粉ミルクで育った赤ちゃんに比べてアレルギー体質になりにくい、なったとしてもなったとしても比較的症状が軽い場合が多いのは、母乳に多く含まれている核酸がアレルギーの発症を抑える働きをするためではないか、よいう説が有力視されてきました。

 

 その説を科学的に裏付けるために、乳業メーカー各社は母乳に含まれている核酸の含有量を測定し、さらにその数値から赤ちゃんの発育に必要とされる核酸の量を算出しました。

 

 まず、体重3kgの新生児が母乳から補う核酸の量は、1日あたり約120mgです。しかし、大人とは全く比較にならないほど急速に発達・成長を遂げる赤ちゃんの体内では、凄まじい勢いで細胞新生(新陳代謝)が行われています。そうした細胞の分裂・増殖を支えるエネルギーを蓄えるためには、1日におよそ480mgの核酸が必要です。

 

 では、残りの360mgはどうやって補うのか。実は、赤ちゃん自身が自分お肝臓で合成した核酸を利用しているのです。

 

 私たちの肝臓(一部は腎臓)には、食事から摂取した栄養素を代謝する際に核酸が二次的に同棲される仕組みが備わっています。専門的にいうと、「デノボ合成」と呼ばれています。赤ちゃんは、特別な病気でもしない限り、大部分の核酸を体内で作り出すことができるのです。

 

 とはいえ、自分の力だけでは1日に必要な量を補えないことも事実。活発な新陳代謝の過程で、毎日約120mgの核酸が尿から排出されていくので、やはり母乳から核酸を補充してあげる必要があります。核酸が転化されていなかった従来の粉ミルクを飲んで育った赤ちゃんに、アレルギー疾患が多発したり、発育不良の傾向が目立ったり、免疫力が弱かったりするのも、つまるところ核酸不足の影響が大きかったわけです。

 

核酸は母乳から補うのが基本

 

 核酸入り粉ミルクは以上のような経緯で誕生し、今や大勢のお母さんたちに利用されています。ただし、粉ミルクに核酸が添加されているからといって、「母乳は大変だから粉ミルクにきりかえる」とは決して思ってはいけません。本当に母乳不足で困っているならともかく、十分に与えられる限りは頑張って母乳を続けてください。

 

 なんども言いますが、赤ちゃんは母親のお乳を飲んで育つのがすべての哺乳動物に共通する自然の摂理です。そして母乳の成分も、初乳から成乳へと、赤ちゃんの状態に合わせてその時期に最もふさわしい栄養を与えられるようにできています。まさに神業ともいうべき仕組みは、どんな科学が進歩しても、人為的に作り出すことは不可能かもしれません。もちろん、乳業メーカーの長年にわたる努力によって粉ミルクの品質が飛躍的に向上したことは間違いありません。

 

 しかし、現在市販されている核酸入り粉ミルクのヌクレオチド(核酸の単位成分)含量は、100gあたり6〜20mg。つまり、先ほど説明した1日あたりの必要量を補うためには、粉ミルクだけでは足りない恐れも出てきます。なので、粉ミルクは母乳で補いきれなかった栄養を補うためのサポートとして利用するのがベストです。現実問題として、母乳がどうしても出ない、母乳だけでは足りないので粉ミルクの助けを借りなければならない、というお母さんが多いのはよくわかります。核酸入り粉ミルクを製造・販売する乳業メーカーも、さまざまな事情を抱えるお母さんを助けるべく、良質な粉ミルクの研究開発に力を注いできました。

 

 したがって、粉ミルクに過剰な期待をするのではなく、自分に最も適したものを選んで上手に利用することを心がけましょう。そうすれば、授乳の負担が軽減されて、赤ちゃんの発育にも必ず役立つはずです。


子育て


母乳に含まれているパーフェクトな栄養成分

 

 文明や科学の進歩は、私たちに便利で豊かな生活をもたらしました。赤ちゃん用の粉ミルクも、科学の進歩によって作り出されたものの一つです。

 

 粉ミルクを製造・販売する乳業メーカーは、長年にわたって母乳の成分を分析し、栄養的に優れた人工乳の開発に力を注いできました。こうした各メーカの開発努力によって、最近の粉ミルクは栄養バランスの面でかなり母乳に近くなったと言われています。しかし、今のところ完全に母乳を模倣した製品を生み出すには至っていません。

 

 では、ここで改めて母乳の素晴らしさを知るために、母乳に含まれている栄養成分を紹介していきます。私たちが普段飲んでいる牛乳と比べると構成成分に大きな違いがあることがわかるかと思います。

 

五大栄養素

 ①タンパク質

 タンパク質は、内臓や筋肉、血管などあらゆる組織や臓器の材料になると同時に、体の機能の調整にも役立っている重要な栄養素です。母乳中のタンパク質含有量は牛乳の約2分の1から3分の1。人間の赤ちゃんは、他の哺乳動物のように生まれてすぐに体を動かす必要がないので、タンパク質の量も少なくて済むようになっています。

 

 アミノ酸(タンパク質の構成要素)組成も、人間特有の発育過程に応じて、短時間で簡単に消化吸収ができるラクトアルブミンが主体になっています。それに比べて牛乳は、消化に時間がかかるカゼインというアミノ酸が主体になっており、人間の赤ちゃんには負担が大きいとされています。

 

 さらに母乳には、脳の発達を促進するタウリンというアミノ酸も豊富に含まれています。ちなみに、牛乳に含まれるタウリンの量は、母乳の半分程度です。タウリンは脳や網膜などの神経発達に欠かせないだけではなく、心肺機能を正常化する作用も認められています。

 

 ②糖質

 母乳に含まれる糖質のほとんどは乳糖で、含有量は牛乳の約2倍です。腸内でガラクトースとグルコースに分解され、体内に吸収されます。グルコースはエネルギー源として使われ、ガラクトースは脳などの組織形成に利用されます。

 

 乳糖にはほかにも、腸内でビフィズス菌などの善玉菌の繁殖を助け、逆に大腸菌などの有害な細胞の繁殖を抑える作用があります。また、腸内でカルシウムや鉄といったミネラル成分と結合し、その吸収を促進する作用があります。

 

 ③脂質

 母乳に含まれる脂質は、3.5%前後を占め、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γ-リノレン酸などの不飽和脂肪酸で構成されています。これらは、細胞膜や消化液、ホルモンの材料になるなど、体の機能を維持するために重要な働きを示していることから、必須脂肪酸とも呼ばれています。母乳中にこれらの脂肪酸が多いということは、栄養学的にも注目すべき要素です。

 

 また母乳には、リパーゼという脂肪を分解するための消化酵素が含まれています。このリパーゼの働きのおかげで、消火器が未発達な赤ちゃんでも、無理なく乳汁中の脂肪を消化できるわけです。

 

 これに対して粉ミルクは、必須脂肪酸を強化するためや脂肪の吸収効率を高めるために乳脂肪の代わりに、大豆などの植物性油脂、動物性ラード、魚油などを添加し、脂肪酸を補っています。

 

 ④ビタミン

 10数種類に及ぶ各種ビタミンは、体内の化学反応を調節し、代謝活動を活性化するうえで重要な役割を果たしています。バランスの取れた食生活を送っているお母さんの母乳には、ほとんどのビタミンが必要なだけ含まれています(ビタミンKだけは例外的に少ない)。

 

 特に含有量が多いのは、免疫力を強化して体の抵抗力を高めたり、体内の酸化を防いで老化やガンの予防に役立つなど様々な生理作用を持つビタミンC、同じく強力な抗酸化作用を持つことで知られているビタミンEです。さらに、体内に吸収されるとビタミンAに変換されるβ-カロチンも豊富に含まれています。ビタミンAにはガン抑制作用、抗酸化作用などが認められていますが、最近の研究によってβ-カロチン自体にも強力な抗酸化作用があることが明らかになっています。

 

 ⑤ミネラル

 細胞間の情報伝達や酸素の運搬、血液の浸透圧の維持、骨の形成など、様々な生命現象を支える元素のことで、主要ミネラル(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン、鉄、イオウなど)と微量ミネラル(亜鉛、ヨウ素、銅、マンガン、セレンなど)に分類されます。

 

 母乳に含まれるミネラルの含有量は鉄を除いてどれも牛乳の3分の1から4分の1程度ですが、腎臓が未発達な赤ちゃんにとってミネラルの過剰摂取は負担が大きすぎることがわかっています。

 

 母乳中の各種ミネラルは理想的な割合で含まれているうえに、乳糖の作用で、吸収効率がいいので、やはり、赤ちゃんの発育には適しています。

 

赤ちゃんを病気から守ってくれる免疫物質

 

 母乳には五大栄養素以外にも特徴的な成分が含まれています。それは、未熟な赤ちゃんを最近やウイルスなどの病原菌から守ったり、アレルギーの原因物質の侵入を防ぐ「生体防御因子」です。

 

 出産から7日ぐらいまでの間に分泌される母乳のことを初乳といいますが、これは通常の母乳、つまり2週目以降に分泌される成乳と成分構成が異なります。最も違う点は、タンパク質の含有量。初乳は成乳に比べると、倍以上のタンパク質を含んでいますが、実はそのタンパク質の中に重要な免疫物質が存在しているのです。

 

 免疫物質とは、外から侵入してきた病原菌などの異物(抗原)に反応し、それに抵抗する物質のことで、体内に抗体を作って異物を排除する免疫グロブリンと呼ばれています。これらはタンパク質の種類によって5つに分類されますが、そのうち母乳に多く含まれているのはIgAという種類の免疫グロブリンです。赤ちゃんが母乳を吸うことで体内に入ってきたIgAは消化液や呼吸器粘膜の中に溶け込んで、腸や肺の上皮細胞の表面に広がり、細菌やウイルスの侵入を強力に防ぎます。

 

 さらに、IgAはアレルギーの原因物質を腸管粘膜の手前で封じ込める働きも示します。母乳で育った赤ちゃんは粉ミルクで育った赤ちゃんに比べてアレルギーになりにくい、またはアレルギー症状が出ても軽い場合が多いことが、過去に行われた数多くの疫学調査によって明らかになっています。

 

 以上の免疫物質の他にも、赤ちゃんの抵抗力を高めて丈夫な体を作る成分があります。それはタンパク質の一種のラクトフェリンとライソザイム(リゾチーム)という酵素です。やはり両方とも初乳の中に多く含まれています。

 

 ラクトフェリンは腸内で鉄と結合することで病原性細菌の繁殖を抑制し、ライソザイムには、大腸菌、ブドウ球菌といった病原性細菌類の細胞壁を溶かす作用があります。先ほど述べた乳糖も、腸内でビフィズス菌の栄養源となり、その増殖を促進します。その結果、腸内で酸性の状態になって、病原性細菌類の繁殖を抑えることができるのです。


子育て, 核酸


母乳で育てることの問題

 

 赤ちゃんを母乳で育てるうえで、残念ながらいくつかの問題点が指摘されていることも事実です。それを事前に知っておけば、赤ちゃんの健康に影響を及ぼす可能性も低くなることは間違いありません。ただ、いくつかの問題点のうち、母乳を与えることをやめるべき深刻なケースはごくわずかです。

 

ダイオキシン類の影響

 

 ダイオキシン類とは、ゴミ焼却の過程で発生する有機塩素化合物の総称で、あらゆる化学物質の中で最も強力な毒性を示します。

 

 ダイキ中に排出されたダイオキシン類は、河川、海洋、土壌を次々と汚染し、農産物や魚介類に蓄えられていくので、私たちは食物を通して、日々否応なくダイオキシン類を体内に蓄えてしまっているわけです。

 

 ダイオキシン類は肝臓や脂肪組織、そして母乳中といった脂肪の中に蓄えられる性質を持っています。そこで近年、お母さんの体内のダイオキシン類が母乳を介して赤ちゃんに移行し、健康被害をもたらすのではないかと指摘されています。

 

 厚生労働省では、「確かに母乳の中には一定量のダイオキシン類が含まれているが、その量は赤ちゃんに影響を与えるほどではない」と判断し、母乳の利点や安全性の面から母乳育児をすすめるという見解を示しています。この問題に関しては現在慎重な調査研究を進めている最中で、より一層適切な対策を講じることが求められています。

 

ビタミンK欠乏の可能性

 

 母乳にはほとんどのビタミンが理想的なバランスで含まれていますが、唯一ビタミンKだけは不足を起こす可能性があります。

 

 ビタミンKは、血液中の成分が結合して血液凝固反応が起こる際、補酵素として働く成分です。不足すると消化官出血や頭蓋内出血などを起こし、嘔吐や呼吸困難、意識障害などをともなう場合もあります。

 

 しかし現在は、生後間もないうちにビタミンKを投与することで出血を未然に防ぐことができるようになっています。

 

母子感染の可能性

 

 まず、B型・C型肺炎についてですが、B型肺炎の場合、出産時の母子感染が主な感染経路となります。しかし、母乳に関しては感染の報告はないので、母乳で育てることも可能です。

 

 一方のC型肺炎は、妊娠や出産による母子感染の可能性はほとんどありません。さらに、母乳を介して感染したという報告はありません。赤ちゃんへの影響は極めて少ないといえるでしょう。

 

 後天性免疫不全症候群(エイズ)は、分娩時の産道での感染と妊娠中に胎盤を介しての感染が中心と言われています。また、母乳から感染する可能性もあります。

 

 成人T細胞白血病は、最も多い感染経路が母子感染で、しかもその大部分が母乳によるものです。したがって、感染が発見された場合には、母乳は断念しざるをえないでしょう。


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