2015年10月の記事一覧


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遺伝子の組換えと遺伝子のクローン化とは?

 

 ヒトなどの哺乳類はもちろん、昆虫や細菌、植物まで、遺伝子はすべて二本鎖DNAでできています。エイズウイルスなどウイルスの一部には、一本鎖RNAが遺伝情報をもつものがありますが、珍しいものです。

 

 二本鎖DNAの構造は細菌から高等生物まで同じなので、あらゆう生物のDNAを互いにつなぐことができるのです。一本鎖RNAのウイルスでも、逆転写酵素(RNAからDNAをつくる酵素)などを使ってRNAを二本鎖DNAに変えれば、ヒトのDNAをつなぐことができます。遺伝子治療では、RNAウイルスに手を加えてつくったベクター(遺伝子の運び屋)にヒトの遺伝子をつないだものが、実際に使われています。

 

 DNAどうしをつなぐためには、両者の切り口が同じ形をしている必要があります。片方の鎖が少し伸びていると理想的です。そのおような切り方をする「制限酵素」が、たくさんあるのです。本来は、細菌などが、内部に侵入したウイルスなどのDNAを切断して、自分を守るための酵素です。

制限酵素によるDNAの切断

 たとえば、EcoRI(エコアールワン)という制限酵素は大腸菌から分離されたもので、GAATTCという6塩基の配列を認識し、GとAの間で切断します。その結果、AATTという4塩基が一本鎖の形で突き出した断端ができます。

 

 同じ制限酵素で切ったDNAは、同じ断端の形をしています。同じ断端をもつDNAどうしは、突き出した部分が相補的で二本鎖になるため、簡単につなぐことができるのです。できたものが組換えDNAです。細菌や酵母などの細胞に入って維持されるDNA(ベクター)にヒトDNAをつないで組換えDNAをつくれば、細胞の増殖とともにヒトDNAを増やすことができます。これがクローン化です。ベクターとしては、大腸菌のプラスミド(染色体とは独立に複製し、次代の細胞に受け継がれるDNA)やファージ(細菌に感染するウイルス)などが用いられます。

 

クローン化のメリットは?

 

 クローン化すると、何かよいことがあるのでしょうか。ヒトの細胞は、ほぼ24時間に1回のペースで分裂しますので、1日に2倍です。大腸菌なら30分に1回ですので、24時間では2の48乗ですから、 281兆倍ほどになります。ヒトのs相棒を増やすのに比べて、けた違いに効率がよいのです。みなが遺伝子のクローン化に目の色を変えている理由が、おわかりいただけると思います。

 

 なお、大腸菌のプラスミドやファージにクローン化できるDNAの長さは、限られています。プラスミドで10kb(kb=1000塩基対)くらい、ファージでは少し大きいくらいです。大きな遺伝子を扱う必要があるときには、酵母人工染色体(YAC)や細菌人工染色体(BAC)をベクターに使います。

 たとえば、YACは、酵母の染色体の動原体、DNA複製の開始点に、テロメアを連結し、1Mb(1000kb)くらいまでのヒトDNAをはさみ込んだまま、酵母の細胞の中で酵母の染色体と同じように複製・分裂するので、大きな遺伝子のクローンができます。

DNAのクローン化


DNAと遺伝子、ゲノム


卵子のゲノムと精子のゲノム

 

 1個の受精卵が細胞分裂を繰り返して、60兆個の細胞からなるといわれるヒトの体をつくりあげます。1つの細胞がDNA複製を行い、2個の細胞に分かれることの繰り返しですから、体内の細胞はすべて同じ遺伝情報をもっています。それにもかかわらず細胞が分化して、さまざまな種類の組織や臓器ができるのは、細胞によって働いている遺伝子と休んでいる遺伝子の組み合わせが違うからです。

 

 受精卵は、精子と卵子のゲノムが融合してできます。精子のゲノムだけが倍加して46,XXの細胞になると、胎盤系の組織が増えて胞状奇胎になり、胎児はできません。46,YYは生存できません。Xにはたくさんの遺伝子が乗っているので、Xなしでは生存できないのです。逆に卵子のゲノムが倍加すると胎盤系の組織はできず、胎児側だけになりますが、正常ではなく、臓器や組織が不規則に混じり合った“奇形腫”です。

 

 卵子や精子に含まれる遺伝子には、それぞれ特有の刷込みのパターンがあるため、精子と卵子のゲノムが対になることで、はじめて正常な胎児と胎盤がそろうのです。

 

受精卵から胎児へ

 

 ところで、正常な受精卵が2 回、3回と分裂した段階では、それぞれの細胞から完全な個体ができます。確認されたのは世界で1例だけですが、カナダの五つ子は一卵性だということです。受精卵が8個に分かれた段階でも、それぞれの細胞が正常な子になることができるのです。

 

 受精後、5日目あたりから、将来は胎児になる部分と、胎児以外の部分になる細胞が分かれはじめます。やがて胚葉の分化がはじまり、20日すぎには神経管などの構造が現れ、8週目には、まだ頭の先から尾まで3cmほどの大きさですが、頭、目、胴に手足らしい形まで姿を現します。このあたりから少し後の時期にかけては、風疹などのウイルス、ネコのトキソプラズマ(胞子虫の一種)の感染、アルコールその他の化学物質などの影響を受けて、奇形になりやすいのです。サリドマイドバビーも、この時期の問題でした。なお、この時期は胎芽、妊娠3カ月より後は胎児と呼びます。

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組織や臓器の分化と遺伝子の働き

 

 成人の体をつくっている細胞を調べると、脳では少なくとも3000の遺伝子が発現しており(3000種類のmRNAを検出)、肝臓でも2000を超えています。他方、唾液腺、副甲状腺などでは、同じデータで、20とか40種類ほどしか働いていません。1000ほどの遺伝子の発現が見つかっている臓器としては、心臓、膵臓、睾丸などがあります。細胞の種類によって、働いている遺伝子の数や種類には大きな差があるのです。

 

 受精後の早い時期には、それぞれの細胞が活発に分裂・増殖しながら、特定の組織や臓器へ分化していくので、成人いくらべて多くの遺伝子が働いている細胞が多いのでしょう。分化は長期にわたる遺伝子の点滅ですから、多くは刷込みが絡んでいると思います。なお、体の構造を決めるホメオボックス遺伝子や、特定の種類の細胞の分化に必要な遺伝子が、次々に見つかっています。

 

 胎芽期に欠かせない遺伝子が変化すると、そもそも妊娠と気づかれる前に消えるか、流産になるので、これまでは遺伝子レベルの研究が難しかったのです。ヒトゲノム計画の進展によって遺伝子をしらみつぶしに調べれば、これらを含めてヒトの遺伝子の全貌がわかるでしょう。それらしい遺伝子が見つかったら、マウスなどの実験動物でその遺伝子を壊して(ノックアウトマウスなど)影響を見れば、遺伝子の働きを推定することができます。

 

再生医療とiPS細胞

 

 感染や外傷により、障害を受けた組織や臓器の回復をはかるためには、特定の種類の細胞への分化や増殖が必要ですが、成人の体を構成している細胞の多くは、このようなことができません。そこで期待されているのがiPS細胞の利用です。iPS細胞はさまざまな組織や臓器に分化することができますので、再生医療の分野で実用化することが期待されます。最初のiPS細胞の作製には、“がん”にかかわる遺伝子が使われたり、遺伝子の導入にウイルスが使われたりしましたが、その後、方法が改善され“がん”のリスクが大きく減ったと思われるので、再生医療への応用の可能性がでてきたのです。実際にマウスなどでiPS細胞から、さまざまな組織や臓器をつくった例が報告されており、ヒトでも実用化が近づいていると思われます。なお2011年8月、マウスのiPS細胞から精子をつくったところ、卵子を受精させて子が生まれたという発表がありました。


DNAと遺伝子、ゲノム


遺伝子の構造

 

 遺伝子はDNAの鎖の上で、特徴のある構造を作っています。ほとんどの遺伝子では、アミノ酸の配列情報をもつエキソンが、いくつかに分かれて、間にイントロンがはさまっています。イントロンとエキソンの境には、イントロンの切り出しに必要な情報があります。上流(5’)側の端にある最初のエキソンのさらにん上流には、遺伝子の発現の調節にかかわるプロモーターがあります。

 

 遺伝子の塩基配列は、イントロンを含めてそのままRNAの配列に写し取られます(転写)。そのRNAからイントロン部分を切り出して除き(スプライシング)、5’側にキャップ構造をつけ、3’側にAがつながったポリAの尾(テール)をつけたものが完成したメッセンジャーRNA(mRNA)です。この状態で核から出て細胞質に移動し、タンパク質合成の場であるリボソームに情報を伝えるので、まさにメッセンジャーです。mRNAノキャップやテールは、細胞質への移動やリボソームとの結合に必要です。

遺伝子の構造と情報の流れ

 mRNAのうち、最初のエキソンのメチオニンのコドンAUGは、翻訳開始のシグナルを兼ねています。リボソームでは、mRNSのMの位置からアミノ酸への翻訳がはじまり、最後のエキソンの停止コドンで翻訳が終わって、アミノ酸がつながったポリペプチド(タンパク質)ができます。なお、ポリペプチドから、さらに一部の区間が除去され、あるいは何個かが集まり立体構造を作って、最終的に機能をもつタンパク質ができる場合もあります。

 

遺伝子の大きさはいろいろ

 

 これまでの遺伝子でもっとも大きいのは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因になるジストロフィン遺伝子で、250万塩基対に近い大きさです。小さいほうは300塩基対をまずかに越えるヒストンH4の遺伝子などがあります。ヒストンH4や、性腺の睾丸側への分化にかかわるSRY遺伝子などは、エキソンが1個だけでイントロンはありません。当然ながら、エキソンが遺伝子の長さの100%を占めています。

 

 ジストロフィン遺伝子は79個のエキソンを含みますが、遺伝子によってはエキソンが100個を超えるものもあります。一般に大きな遺伝子では全長に占めるエキソンの割合が低く、ジストロフィンではなんと0.6%で、99%以上がイントロンです。

 

ハウスキーピング遺伝子と組織特異的遺伝子

 

 1個の受精卵から、さまざまな組織や臓器ができるのは、それぞれの細胞に含まれる遺伝子の活性化または長期にわたる休止が、規則的に行われているからです。

 

 遺伝子には、ハウスキーピング遺伝子と、組織特異的遺伝子があります。前者は、相棒のエネルギー代謝や浸透圧の調節などにかかわり、すべての細胞が生きていくのに欠かせない遺伝子です。当然ながら、すべての細胞で働いています。後者は、膵臓のランゲルハンス島のベータ細胞で働いている、インスリン遺伝子が例で、特定の種類の細胞だけで働いています。

 

遺伝子の活動とその調整

 

 遺伝子の活動(発現)の調節には、さまざまなメカニズムが働いています。少し複雑ですが、いくつか紹介しておきましょう。

 

 まず、遺伝子のすぐ上流(5’)側には、前期のようにプロモーターがあります。その部分にはRNAへの転写の開始に必要な転写因子が結合するCAATボックス(CCAATなど)やTATAボックス(TATAAAなど)、GCボックス(GGGCGGなど)などの塩基配列が、さまざまな組み合わせで見られます。たとえば、ある遺伝子では、転写開始点の20塩基女流にTATAボックスがあります。

 

 転写因子やRNA転写酵素などが集まって、転写複合体(転写コンプレックス)をつくり、それがプロモーターに結合して転写がはじまります。

 

 遺伝子によってはエンハンサーもあります。これも転写を高めますが、位置は決まっておらず、遺伝子の下流(3’)側にあったり、イントロンの中にあったりします。プロモーターとエンハンサーにそれぞれ結合した転写因子などが、互いに密着すると転写が活発になります。

プロモーターの構造

 あるステロイドホルモンの濃度が上がると、それが何種類かの細胞の中に入り、受容体と結合します。すると受容体の性質が変わり、標的遺伝子のエンハンサーやプロモーター領域に結合して、その遺伝子の活性を変える、というのが短期的な調整の例です。タンパク質や糖などさまざまな物質が、細胞の表面にある受容体に結合することで、細胞内に情報を間接的に伝えて転写の調整を行います。

 

遺伝子の刷込みとは?

 

 遺伝子には刷込みという現象があります。対立遺伝子のうち、たとえば父(精子)からのは働いているが、母(卵子)からのは休んでいる(刷込みを受けている)のです。逆に、父からのが休んでいる例もあります。

 

 精神遅滞や肥満が見られるプラダー・ウィリー症候群(PWS)の患者では、ときに15番染色体が小さく欠けていますが、欠けているのはいつも父由来の15番です。母からの15番ではPWSの対立遺伝子が休んでいるので、欠けても影響はなにのです。

 

 同じ15番で、逆に父からの対立遺伝子が休んでいる病気も見つかりました。アンジェルマン症候群(AS)です。これらは長期にわたり対立遺伝子を休止させるメカニズムです。刷込みの本態は、遺伝子のCG部分のCのメチル化だと考えられています。シトシンの5の位置の炭素がメチル化され、5-メチルシトシンに変わっているのです。

シトシンのメチル化

 女性のX染色体のうち片方が不活性化していることは、1つの遺伝子で決まる性質や病気で紹介しましたが、不活性化したXでは、遺伝子がメチル化することで遺伝子が休止しているのです。


DNAと遺伝子、ゲノム


DNAは二本鎖の螺旋構造

 

 ここで、DNAを見てみましょう。DNAははしごを少しねじった、螺旋階段のような形をしています。両側の支柱にあたるのが、糖(五炭糖)とリン酸が交互につながった構造です。2本の柱には方向性があり、互いに逆向きに走っています。両方の柱の糖から塩基が突き出して、対をつくっています。塩基対と呼ばれ、はしごでいえば足をかける横棒の位置です。両方に支柱があるので、二本鎖DNAです。

DNAのイメージ

 塩基と呼ばれているのは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種の化合物です。

 

 片方の鎖(支柱)の糖から突き出したAは、反対側の鎖のTと対をつくります。AとTは互いを結びつける水素結合の腕が2本なのに、GとCは3本なので、AとGといった組み合わせはないのです。対は2種類だけですが、片方の鎖につくのがAかTか、CかGかという区別もありますので、片方の鎖に並ぶ塩基を見ると、A、T、G、Cの4種類になります。これら4種類の塩基の配列が、遺伝情報の本態です。

 

 二本鎖DNAを見ると、片方の鎖にAがあれば反対側の同じ位置にはTが、片方がGなら反対側には必ずCがあるので、2本の鎖は相補的であるといいます。別の場所からもってきた2種類の二本鎖DNAを、それぞれ1本ずつに離して、混ぜてから二本鎖に戻る条件にすると、もとの相手とは二本鎖に戻りますが、相手を替えて二本鎖になることはありません。

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 なお糖には1’~5’という位置があります。DNAの鎖は5’からはじまり、3’の位置に、リン酸を経由して次の糖の5’が付く、という形で伸びます。DNAの複製も、遺伝子の情報をmRNAに写し取る転写も、すべて5’から3’の方向に進みます。つまり、鎖には方向性があるのです。また、糖の2’の位置にHがついているとDNA、OHならRNAという違いもあります。DNAとはデオキシリボ核酸の略ですが、この「デオキシ」とは、RNA(リボ核酸)に比べて酸素が一つ少ないという意味です。RNAでは、塩基もTの代わりにウラシル (U)が入っています。Uも水素結合の腕が2本なので、Aと対をつくるのです。A、G、Cについては、DNAとRNAに違いはありません。

 

DNAの複製のしくみ

 

 それぞれの細胞に含まれる46本のDNAは、複製によって1本が2本に増え、それが2つの細胞に分配されて、もとと同じ46本を含む細胞が2個できます。複製は二本鎖DNAが1本ずつに分かれ、それぞれの鎖が相補的な鎖を合成するという形で進みます。

 

 DNA複製は5’から3’の方向にしか進みません。片方の鎖は5’から3’へと連続して進みますが、相手の鎖は逆方向になってしまいます。そこで5’から3’へと短い鎖を合成し、続いてその5’側の少し離れたところからまた5’から3’へと短く合成する。つまり、短い区間の複製を、いわば後ずさりするように繰り返しながら、複製画進むのです。

 

 なお、複製には“校正機構”があり、複製によって新しい鎖に取り込まれた塩基に、誤りがないかをチェックしています。正確な相補的な複製によって、体内の細胞のすべてが正常なDNA(遺伝子)の組み合わせをもち、子孫にも正しい情報が伝わるのです。それでもごく低い頻度ながら誤りが起こります。

DNAの複製

3塩基配列のコドンが遺伝情報

 

A、G、C、Tという、わずか4種類の塩基の並び方で、あらゆる遺伝情報を表すことができるのでしょうか。

 

 実際には、3塩基の配列で1つのアミノ酸を指定し、アミノ酸の配列でタンパク質の性質が決まるという2段がまえのシステムになっています。アミノ酸を指定している3塩基の配列がコドン(遺伝暗号)です。コドンはDNAからRNAに転写された状態で表す習慣なので、Tの代わりにUが入っています。

 

 4種類の塩基を3個ずつ並べると、可能な配列は64種類ですから(4の3乗)、20種類しかないアミノ酸に対して配列が余ってしまいます。同じアミノ酸に複数のコドンが対応しているのは、そのためです。

遺伝暗号

 たとえば、はじめの2文字がGGであれば、3文字目がA、G、C、Uのどれであってもグリシンのコドンであるというのが例です。多いものでは1つのアミノ酸に6種類のコドンが対応しています。1種類のコドンだけが対応しているアミノ酸もあります。

 

 なお、UAG、UAAやUGAは停止コドンで、RNAからアミノ酸への翻訳を止めます。翻訳開始のコドンもあります。

 

 


DNAと遺伝子、ゲノム


DNAは細胞の核に入っている

 

 ヒトの体は、約60兆個の細胞からできています。細胞にはさまざまな形のものがありますが、日の丸の角を落として全体を楕円形にしたものが細胞で、中央の赤い丸が核というイメージです。旗の白い部分にあたるのが細胞質で、タンパク質の合成にかかわるリボソームや、エネルギー生産にかかわるミトコンドリアなど、細胞小器官が散在しています。

細胞の構造

 細胞には大きく平たいものや、小さく球形に近いものなど、さまざまな形のものがあります。神経細胞のうちには、40〜50cmに及ぶ糸のような軸索を伸ばしているもんさえあります。細胞の大きやさ形は種類によって大きく違いますが、とりあえず核の直径は数μmほどと思ってください。核には46本の染色体がほどけた状態で入っています。

 

 それぞれの染色体の中を、端から端までDNAが走っています。1つの細胞に含まれるDNAの長さの合計は2mにもなりますが、それが何百段もの構造をつくって圧縮され、染色体や核をつくっています。細胞の核では染色体の形はほどけて均質に見えますが、これをクロマチンと呼びます。

 

細胞分裂と細胞周期

 

 細胞が2つに分かれる「分裂期」には、球形の核に含まれるクロマチンが、急速に圧縮されます。核を包んでいる角膜が消え、凝集したクロマチンが染色体として姿を表すのです。これが分裂期(M期)で、それ以外の時期を分裂期間と呼びます。分裂期間にはほぼ球形の核が、分裂期には46本の染色体に姿を変えるのです。

 

 なお、分裂期の時期(DNA複製がはじまるまでをG1期と呼ぶ)には、それぞれの染色体の中を1本の二本鎖DNAが走っていますが、やがて次の分裂に備えてDNAの複製がはじまります。この時期をS期(複製期)と呼び、それぞれの染色体のDNAが全長にわたって2本に増えます。複製が終わると、短い休止期(G2期)をはさんで細胞分裂がはじまります。

 

 つまり細胞はG1、S、G2、M期と進んで細胞が2個に分かれ、次のG1期に入るというサイクルを繰り返しています。これが細胞周期です。神経細胞など分裂しない細胞は、ずっとG1期にとどまっているのです。

細胞周期

 G2期から分裂期にかけての染色体は、DNAを2本含んでいます。そのため、分裂期の染色体は1本の棒ではなく、2本の染色分体に分かれてX型に見えたりするのです。染色体のくびれた部分は、動原体といい、分裂期には紡錘糸が付着して、染色分体を引き離して2つの細胞に分配します。染色体のそれぞれの腕(短腕と長腕)の末端には、テロメアと呼ばれる構造があります。TTAGGGという塩基配列が繰り返した構造で、末端部分を保護しています。動原体にも一種の反復配列があります。

 

 分裂によって染色分体は2つの細胞に分配されるので、次のG1期には、染色体中のDNAは1本に戻ります。染色体とDNAは対応していますので、長い(大きな)染色体のDNAは長く、短い染色体のDNAは短いのです。

 

 DNAには遺伝子が散在していますが、遺伝子の長さの合計はDNAの3〜5%ほどで、DNAの大部分は情報をもたないと考えられています。つまり染色体(DNA)上には、遺伝子が離れ離れに分布しているのです。

染色体の構造

ゲノムは遺伝の基礎単位

 

 それぞれの細胞に含まれる46本の染色体は、すべて対になっています。対の片方にあたる23本の染色体は父親の精子から、相手の23本は母親の卵子から伝わったものです。受精によってできた23対46本の染色体を含む1個の受精卵が、細胞分裂を繰り返して体をつくります。

 したがって、精子や卵子に含まれる23本の染色体と、それに含まれるDNAや遺伝子が遺伝の基本的な単位になっており、これをゲノムと呼びます。なお、DNAは1本ずつ区分するのが難しいので、23本分の長さ(30億塩基対)をまとめてゲノムとして扱います。つまり、体をつくっている細胞は、それぞれゲノムを対で含んでいるのです。


DNAと遺伝子、ゲノム