2015年7月の記事一覧


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私たちの体はいつも同じように見えますが、実は毎日多くの細胞が死んでおり、絶えず新しい細胞をつくらなければなりません。そしてそのために細胞が行っている作業が細胞分裂です。細胞分裂とは、その名の通り「細胞が分裂する」、すなわち「1個の細胞が分かれて新しい2個の細胞になる」過程のことです。

 

 細胞分裂には、体細胞分裂減数分裂の2種類あります。皮膚、骨、内臓など体を構成する各部分の細胞を体細胞といいますが、この体細胞の分裂を体細胞分裂と呼んでいます。一方、卵巣や精巣といった生殖細胞の分裂を減数分裂えお呼んでいます。同じ細胞分裂でも目的が異なるために、異なる分裂を行います。体細胞分裂は生命としての細胞を守るために行う分裂、減数分裂は遺伝子そのものが死なない、(絶滅しない)ために行う分裂です。したがってまったく同じ細胞分裂でも、まったく様相が違ってきます。  

細胞周期におけるDNA量の変化.svg

 遺伝子をつないでいく減数分裂に関しては別の記事(究極の目標・生殖細胞の創造はなにを意味するのか?)で詳しく説明するとして、ここでは体細胞分裂について書いていきたいと思います。

 

 やい細胞分裂にはいくつかのステップ(段階)があります。そして最初の分裂から次の分裂までを細胞周期といいますが、この細胞周期を動かすために、実に様々な遺伝子が働きかけています。遺伝子が細胞を分裂する指示をだすと、46本(23対)ある染色体がそれぞれコピーされて体細胞2個分の染色体になり、細胞分裂が始まります。細胞分裂の時期は4つに分かれ、前期、中期、後期、終期と呼ばれています。

 

  • 前期:染色体が移動し、細胞が赤道面に沿って並ぶまで
  • 中期:染色体が、細胞の赤道面に沿って並んでいる期間
  • 後期:分裂した染色体が、ゆっくり両極へと移動
  • 終期:すべての染色体が極に到達。細胞質が分裂して2つの細胞になる

 このように、遺伝子の働きかけで染色体を細胞内で2つに分け、細胞を分裂せざるをえない状態にもっていきます。細胞分裂はまさに「遺伝子が仕掛けた罠」、遺伝子によってコントロールされているといっても過言ではありません。


iPS細胞について, 生命の基本単位である遺伝子と容器としての細胞


 ヒトの体は、約60兆個の細胞が集まってできています。ある試算では、これらの細胞のうち1日で約3000億個が死に、この数を補うように毎日新しい細胞が誕生しているともいわれています。この試算からすると、たった1秒間で約300万個が死んで、同じ数の細胞が生まれ変わっている計算になります。ただ、これらはあくまで試算であって実態とは異なっており、実際私たちの体の細胞のすべてが毎日毎日生まれ変わっているわけではありません。死んで生まれ変わる細胞の代表は赤血球と皮膚の細胞で、そのほかに肝臓や消化管、骨なども部分的に生まれ変わっています。

 

 もっとも生まれ変わりの激しいのは赤血球と皮膚の細胞(正確には表皮細胞)であり、そこには脱核(無核化)という共通点があります。脱核とは、死ぬことによってみずからが生命体ではなく無機質な構造物(物質)に変化するために必要不可欠な生命反応です。脱核することによって生命体は、構造物(いってみれば死体)に変化します。したがって赤血球や爪、毛髪、表皮は、生命体ではなくたんなる構造物(細胞の死骸)です。ですから、爪を切っても髪を切っても表皮を垢すりでこすっても血も出ませんし、痛くもかゆくもありません。生命の根源は遺伝子であり、それなくしては生命はありえないということを解説してきましたが、生命全体を支えるためにみずから死(脱核or無核化)を選ぶ細胞もあるのです。

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 ただ、われわれを構成する約60兆個の細胞の場所によって状況が異なります。たとえば脳細胞は、3歳ごろまで増殖し、その後まったく増えず、生き続けます。そして10代になってからは、脳細胞は徐々に減少していきます。私たちが記憶や学習という行為ができるのは、この脳細胞が長く生き続けているからだと思われます。年をとるにつれて、記憶力が悪くなったり、学習能力が低下してきたと感じる方は多いでしょう。それは、脳細胞が減少しているからかもしれません。

img_creation_2_2(年齢と脳細胞数の関係)
 あた、脊椎動物を支える硬い骨は、数ヶ月で全部新しく置き換わるそうです。骨折するとよくギブスで固定しますが、骨の細胞が新しい細胞をつくり古い細胞を入れ替えているので、骨は折れてもくっつきます。もし骨の細胞が増殖しなければ、折れた骨はもとに戻ることはないのです。


iPS細胞について, 人体を構成する細胞の特殊性とは?


 多細胞生物を構成する細胞は、たとえばバラバラにしても常に集合しようとする性質があり、もとの多細胞化に戻ろうとします。これは、多細胞生物における細胞表面に接着物質や接着装置など、細胞を接着させるさまざまな仕組みが存在しているからです。この仕組みを生かして多細胞生物は、自分自身を安定な状態に保つために外部環境を遮断し、体内環境をつくりだす仕組みを取り入れています。

 

 動物では皮膚があり、これは熱や光など機械的・物理的傷害から体を守り、表皮下血管網の調整や発汗などを通して体温調節に役立っています。高等植物では表皮があり、これは植物体を機械的・物理的傷害から守とともに、水分の蒸発を防いでいます。このように多細胞生物は、生存に非常に有利な形態を取り入れています。

 

 また、多細胞生物は、環境などの影響を受け、形態の対称性を指示するようになりました。そのためヒトにかぎらず動物界を見渡すと、その外部形態はほぼ対称性が保たれています。

 動物進化における体の対称性は、腔腸動物の段階からすでに始まっています。動物界の進化は、骨格のつくりから見て腔腸動物以後、ヒトを進化の頂点とする脊椎動物への方向と、昆虫類を進化の頂点とする無脊椎動物への方向の2つの方向に分かれます。どちらの形態においても、外部形態の対称性は維持されています。ヒトの体の場合には、鼻とへそを結ぶ部分で体をまっぷたつに分けると、目、耳、鼻孔、手、足、は左右対称になっています。しかし、上皮によって環境から遮断された体の内部器官である心臓、胃、小腸、肝臓などの臓器には、対称性はありません。この対称性・非対称性は、長い歴史を通してDNAのプログラムの中に織り込まれてきたものであると考えられています。

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iPS細胞について, 生命の基本単位である遺伝子と容器としての細胞


 基本的に細胞の集合体、すなわち多細胞化した細胞においては、内部に位置する細胞は、外部の環境と直接的な物質やエネルギーのやり取りをもつことができません。しかし、多細胞生物と単細胞生物の中間と考えられるボルボックスは、5万個もの細胞からなる大きな球状の生物ですが、内部は空洞になっていて、細胞は表面に一層に並んでいるだけです。鞭毛運動でクルクル回ることですべての構成細胞に光と栄養を均等に供給し、すべての細胞が外部の環境と直接的な物質やエネルギーのやり取りは行う点で、単細胞生物がただたんに集まっただけのような構造をしています。しかもボルボックスは生殖細胞を分化させ、その一部の細胞だけが子孫を残します。ほかの細胞群体では構成細胞がすべて生殖細胞として機能する点で、単なる個々の細胞の集まりとは異なっています。

lab3-144163-o(ボルボックス)

 群体のもっとも進化したものといわれるカイメンは、体型はつぼ状で、中央に大きな空洞があり、上方には口が開いています。ボルボックスの違いとしては、水流運動を通して体内のすべての細胞で環境との物質交換ができるようになっていることです。さらに多細胞化が進んで体が大きくなってくると、内部の細胞に栄養や酸素を供給するためのシステムとして、水の流動性を利用したやり取りを発達させてきました。

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 群体を除き、多細胞生物のもっとも原始的な段階にあるといわれている腔腸動物のクラゲやヒドラは、この水の流動性を利用したやり取りを行っています。水生植物の場合は、すべての細胞が外界の水と直接物質交換をしていて、特別な移送系は発達していません。しかし、植物が陸上に進出するようになると、移送系の発達が見られるようになりました。

 

 たとえばシダなどの陸上植物は、水分や無機栄養を根の一部からしか取り入れることができません。そのため水分や無機栄養を吸い上げ、全身に配るための通路と、葉の光合成で生産した有機物を幹や根に下降させるための通路である維管束が必要となります。すなわち水分や栄養を吸収する根と、光合成を行う葉、その葉をできるだけ高いところにおいて光合成をしやすくするための直立した茎が発達しているのです。

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 このように、細胞はお互い役割分担(相互作用)を行うことで現在の生命になっているのです。


iPS細胞について, 生命の基本単位である遺伝子と容器としての細胞


 生物は多細胞化の道をたどることによって、単細胞では決して得られない有利な生命継続の手段を手に入れました。その反面、内部に位置する細胞は、外部の環境と直接的なエネルギーのやり取りをもつことができなくなり、移送のために特別な細胞が必要になりました。すなわち細胞同士の役割分担は必要不可欠になっているのです。そこで次に多細胞生物が、役割分担(細胞間相互作用)をスムーズに行うために細胞間で情報のやり取りをどのようにしているのかについて説明します。

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 動物では、化学信号としての化学伝達物質(ホルモン、サイトカイン、ケミカルメディエーター、グロースファクターなど)と、電気信号としての神経組織を発達させてきました。化学伝達物質は体内の特定の部位でつくられ、他の部位(遠方や近接)に運ばれて作用をおよぼします。化学伝達物質としては、血糖値に関係するインシュリンや血圧の上昇に関係するアドレナリンなどがあります。これらの中には別の化学伝達物質の分泌を刺激するためのものも多く、いく段階かを経て最終の生理効果を示すことから、化学伝達物質の効果は神経伝達に比べて非常にゆっくりとしか現れません。

 

 一方、神経細胞はミリ秒単位で情報が伝達できます。神経は主に3つの部分い区分けされ、細胞核のある細胞体、他の細胞からの入力を受ける樹状突起(じゅじょうとっき)、他の細胞に出力する軸索(じくさく)に分けられます。

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 前の細胞の軸索終末と後ろの細胞にある樹状突起の間の情報を伝達する部分には、微小な間隙をもつシプナスト呼ばれる化学物質による伝達構造が形成されています。神経細胞は、神経細胞同士が突起を伸ばし合ってつながり、全身に送信網がつくりあげられています。神経細胞の基本的な機能は、神経細胞へ入力刺激が入ってきた場合に、活動電位を発生させ、ほかの細胞に情報を伝達することです。活動電位とは、なんらかの刺激に応じてナトリウムイオンやカリウムイオンが細胞内外に濃度差をつくることで細胞膜に生じる、一過性の膜電位の変化をいいます。

 1つの神経細胞に複数の細胞から入力したり、活動電位が起きる限界値を変化させたりすることにより、情報の修飾が行われるのです。


iPS細胞について, 生命の基本単位である遺伝子と容器としての細胞